東フローレスで寿司を握る Flores Timur & Sushi

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NTT(東ヌサトゥンガラ)州に日本の寿司文化を広めるGBI(インドネシア文化宮)の、無謀だが、結構楽しい野望は、アロール県に次いで(第5回アロール・エキスポで寿司を握る、を参照!)、一県置いて西隣の東フローレス県(Flores Timur、略してFlotim)に場所を移した。時は西暦2006年8月15日。まさに日本の終戦記念日。インドネシア独立記念日の前々日。寿司作りの動機は、もはやアロールでのそれとは、若干どころか大幅に違った。アロール県では、すでに刺身文化を理解する下地があり、食材も豊富なのに、全般的に食文化が貧困であるところから、ならば、地元の新鮮な食材を用いて寿司文化の普及に挑戦しようとの、ある程度高尚な理想を掲げたが、東フローレスでは、その志がかなり変化していた。
要は、アロールで寿司作り実践講座を終えてみたら、まだ日本から持参したワサビと醤油が相当残っていた点だ。さらに、アロールでの高い評判に酔いしれて、その余韻が「俺って寿司職人みたい....」と、根拠のない自信を過剰に意識してしまったことにある。そこで、GBIと同県が共催した『第一回東フローレス・イカット(絣)コンテスト』の最終日の晩餐に、「アロールでバカ受けした寿司をここでもやってみましょうか?」と、その前日、ヨセフ副知事にしゃべったところ、「バグス・スカリ!(いいじゃん!)。寿司いってみよう!」と真顔で要請されたのです。つまり、これは、個人的野心が県政府の正式な要請へと化けたわけです。
調理場所は、副知事公邸の台所。寿司パーティー会場は県知事公邸。時間は夜の20時頃、と決まった。そこで、直ちに、最重要ネタであるトロ探しがスタートした。県都ララントゥカの郊外には、日系の水産会社が大型冷凍庫を備え付けて稼動しているとの情報をゲット。直ちに、現場へ。が、事務方の青年の話に寄れば、最近はめったに良いマグロが入ってこないとのこと。刺身なら僕だって食べるよ、と強調したがるその青年は、「夕刻に船が入港するから、その頃もう一度やってきてチェックしてみたら」と。で、そこは動揺せずに、島巡りを楽しみながら、夕闇が迫るのを待った。
夕方、移動する車の中から携帯電話で刺身好き青年とコンタクト。「今、入港した船の近くの桟橋にいるんだけども、まだマグロを積んできたかどうかは分からない。とにかくこちらに向かったら?」との、期待を支える回答。港に着くと、結構大きな漁船が。刺身好き青年が、岸壁から船に乗り移り、船員らと何らや話している。と、僕らを見つけた刺身好き青年が、「アダ(あるよ)!キラニャ・チョチョック・ウントゥク・サシミ!(まあ刺身に適していると思うよ)」。まさに地獄に仏。寿司作りスタートまで、あと1-2時間というのに、もしもマグロが手に入らなかったら、どうしよう。それまで深刻に悩んでいたのです。小ぶりだが、まさにキハダマグロ。なによりも釣り上げて即冷凍したため、鮮度は抜群。代金を支払おうとしたが、刺身青年は、「お金はいいから、県知事たちに美味い寿司作ってあげてよ!」と、なんとも寛大。ラッキー!





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副知事公邸で、公邸の台所を管理するヤンティさんと寿司メシをパタパタ(ウチワの音でーす)と作るGBI代表。夕暮れの蒸し暑さに加えて、お寿司のご飯から上がる湯気が、体感湿度100%に!



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台所では、トッピング用のルンダン(牛肉をココナツミルクや香辛料で煮込んだもの)作りが副知事公邸付け料理人兼女中さんたちによって進む



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テンペ(インドネシアを代表する納豆食品)と玉子焼き。テンペは寿司ネタに最高!


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ナナス(パイナップル)。学生時代、西表島で毎日3-4個を食べ、その甘みで口の脇が切れて以来、パイナップル恐怖症のGBI代表も、東フローレスのナナスの味に感動。これまた寿司に良く合う




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市場で購入した新品の日本製ステンレス包丁を使って刺身が出来上がった。水道水の質を懸念して、“消毒”用にライムを搾った




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キハダマグロのお頭で、デコレーションの作製も。まだまだ修行が足りない。皆、気持ち悪がっていた。




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副知事夫人のテレシアさんが見守る中、汗だくで寿司を握るGBI代表。アロールでの失敗を素直に反省し、今回は米80%、もち米20%の混合で、まあまあの寿司ご飯が出来た




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完成した寿司。上からテンペ、玉子焼き、そしてマグロ。この他、ルンダン、パイナップル、果物のナンカなどもトッピングに。飾りつけは、副知事公邸の中庭に生えていたトロピカルな花を利用




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県知事公邸に場所を移し、いよいよ寿司パーティー。石井和子元東京外国語大学教授を挟んでシモン県知事夫人(右から二人目)とヨセフ副知事夫人(右から四人目)が、「チャンティック・スカリ(とっても綺麗ね!)」と。「そうなんです、日本料理は目でも楽しむのです」と、口には出さないものの、陰でほくそ笑むGBI代表



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(上)左から石井和子さん、副知事夫人、県知事夫人



(下)ヨセフ副知事。「これなら家でも出来るかも!?」と。そうです、全工程を目撃しつつ調理を助けてくれたヤンティさんなら、きっとできます!





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アロール県に次いで東フローレス県でも日本の寿司(もどき(^_^;)文化の紹介にこだわった2006年の夏は終わった。食文化の合体による新たな食文化の創造(そこまで言う?)。食材探しに、一緒にあちこち奔走し、一緒に魚を捌き、一緒にご飯を炊き、一緒に味わった、両県の友達。ほんの数時間のプロセスでしたが、食文化の交流がこれほどまでに容易に、異なる文化背景の人々を結び付けてしまう魅力溢れる行為なんだということを、再認識したチャレンジでした。来年のアロール・エキスポ、そして東フローレス文化祭、それからその他の地域での文化イベントでも、新たな日本とインドネシアの食文化の“合体”に取り組んでみたいと、またまた幼稚な夢を抱くのであります。大学芋もいいし、お好み焼きも、そして鍋物なんかもいいかな。

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