韓国&インドネシア

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                       韓国外国語大学インドネシア語学科の生徒。手作りの衣装でバリ&ジャワ舞踊


インドネシアで、中国の“存在”が、特に経済面で飛躍的に高まっている。かつてスハルト政権の前期・中期において、イ中関係が国交断絶によって“冷戦”関係にあったことを知っている者にとって、今日のジャカルタ・北京関係は、隔世の思いだ。急速な経済成長を支えるエネルギー確保に動く中国にとって、インドネシアは西南太平洋地域においては最重要国。原油やガスを始め、中国は積極的に資源確保のためにインドネシアにコミットしている。また、インドネシア国内における中国製品の急激な浸透状況も、両国経済関係の拡大を象徴している。
スマトラ島の東に位置するマラッカ海峡は、日本にとっての“生命線”であるばかりでなく、今や中国や韓国にとっても“生命線”と化している。言い換えれば、安全なシーレーンの確保は、中国や韓国にとっても重要課題だ。そのため、中国によるスマトラ東海岸での漁港基地建設計画は、“生命線”に、将来の軍事的要素も勘案して、橋頭堡を築く狙いがあるのでは、との懸念も生んでいる。インドネシア東端のパプア州。その最東南端のメラウケ県では、中国企業が船団を送り込んで漁業資源の確保に励んでいる。まさに、「サバン(バンダアチェの北に浮かぶウェ島の中心都市)からメラウケまで」のインドネシアの全域に中国が、その存在感を示している。



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韓国外国語大学インドネシア語学科で、インドネシア文化宮(GBI)代表による『インドネシアのテキスタイル文化』講演。生徒の多くが未だインドネシア語理解力がいまいちなので、同学科卒業生でインドネシア語で博士号を取得したビュンさんが通訳。アチェに始まりパプアの樹皮製衣服まで、インドネシア各地のイカット(絣)やソンケット(縫取り織り)、タペストリーなど約30点の布を見ながらの受講


さて、中国と並んで、韓国もインドネシアで、その存在感をますます高めている。それは、単に首都ジャカルタの韓国レストランや韓国パブの数の増加に反映されているばかりではなく、韓国国内のインドネシア人研修生や不法滞在者の急激な拡大からも容易に知ることができる。インドネシアに暮らす韓国人の数はおおよそ30,000(韓国大使館への登録数)から40,000人(登録しない者や短期出張組みなどを含む)。この数値は、日本人数の3-4倍にあたる。
日本でインドネシア語を学んだ学生たちの多くが、就職に際して、インドネシア語を活かすことができない職種に就くのに対して、韓国や中国のインドネシア語課卒業生の多くが、直接インドネシアと関係する職業に就いている。しかしながら、在留者の数や、言葉を解する大卒の数とは裏腹に、韓国では日本と比べると、格段の差でインドネシア理解が遅れている。日本には、70年代、そして80年代にそのスタートを遡る幾つものインドネシア関連の団体や、インドネシアの文化理解を目指すグループがある。一方、韓国では、ようやく昨年辺りから、経済関係一辺倒ではない韓イ関係を築こうとする動きが見え始めてきた。



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                        ラジカセから流れる音楽に合わせて韓国版インドネシア舞踊を披露

韓国外国語大学(Hankuk University of Foreign Studies)インドネシア語学科の学生たちの間で、昨年、バリ舞踊やジャワ舞踊を学ぶグループが生まれた。主任教授のチュン・ヨン・リムさんによれば、教師陣からの提案ではなく、生徒自身が始めたそうだ。ジャカルタに一年間の留学経験がある現役女子大生が指導して、十数名の男子・女子学生が、毎週2-3回の練習に励んでいる。衣装は手作りで、どことなくインドネシア風で、どことなくそうではない感じもするが、インドネシア製の本格的衣装で練習し、公演を行う日本のグループと比べると、なんとも健気な努力で好感。「インドネシア語はまだまだだけれども、インドネシアの踊りって、本当に好き!」と、生徒の一人。今後は、日本のバリ舞踊やジャワ舞踊のグループとも交流していきたいとも。


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左から韓国外国語大学インドネシア語学科主任教授のChung Young Rhimさん、ポストChungと言われるインドネシア語通訳のByun Yoon Haengさん、GBI代表(ソウル市内のカフェで)


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韓国外国語大学インドネシア語学科主任教授のChungさんは、2006年8月に実施されたNTT(東ヌサトゥンガラ州)アロール県の『第5回アロール・エキスポ』に参加。右はアンス・タカラペタ県知事


ソウルで今、KIFA(Korea Indonesia Friendship Association・韓国インドネシア友好協会)が産声を上げようとしている。尹海重(Yun Hai Jung)元駐ジャカルタ韓国大使を会長に、インドネシア通7名が発起人。また同国のインドネシア進出主要企業が賛助金を提供する計画。組織的には既に出来上がっているが、発足式をインドネシアの大統領の訪韓に合わせて実施したいため、未だ正式発足に至っていない。今年、ユドヨノ大統領は北朝鮮と韓国の同時歴訪を計画したが、国内の自然災害や、北朝鮮によるミサイル発射&核実験などの影響で、未だ実現していない。「ユドヨノ大統領の訪韓が実現すれば、その際に、大統領臨席のもとでKIFAの設立を宣言したいのですが、こればかりは、訪韓が実現する環境が必要ですから」と、KIFA事務局長でKBS放送のインドネシア語放送担当プロデューサーの金栄秀(Kim Young Soo)氏。KIFAは、インドネシア文化宮(GBI)とも提携して、韓日共同のインドネシア関連展示会も計画しているが、現段階では、ユドヨノ大統領の訪韓が実現しない限り、具体的な活動はしにくいとの理由で、友好プログラムの案件検討を進めている。遠くない将来、韓国で積極的なインドネシア紹介活動が始まることに期待したい。



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2007年12月まで、ソウルにある韓国国立博物館で『インドネシア古代展』が開催中。マジャパヒト王朝の石仏や、さらに古い時代の銅鼓などが展示されている。ソウル市内の小学生も先生に引率されてやってきた。「いっぱい石の彫刻を見れて嬉しい。でも、この部屋に入った最初は、像が怖かったんだよ」と、Kim Do Young君(右端))


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朝鮮戦争の1950年代に韓国に入ったとされるイスラム教。2005年、韓国イスラム50周年の記念式典も行われた。「韓国全土に約4-5万人の韓国人イスラム教徒がいます。さらに、1990年代から増え始めたイスラム教徒の外国人もいますから、トータルでは14-15万人に達するでしょう」とKMF(Korea Muslim Federation)会長で、韓国外国語大学のアラビア語の教授でもあるDr. Abdul Raziq Sohn Joo Young氏。KMFは全土に9支部を有し、50を超えるモスクが存在している。「今世紀、イスラム教は、ここ韓国で宗教と文化面でとても重要なファクターになるでしょう」とも。毎金曜日、多くのソウル在住のインドネシア人がモスクに集まってくる。モスクは、韓国で働く正規・非正規の研修生や不法就労者たちの“オアシス”的存在。ここで、情報交換が行われている


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【参考URL】

インドネシア文化宮:http://clik.to/GBI

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