心の友(Kokoro no Tomo)
皇太子妃殿下の肖像をジャケットに使用した音楽カセット
東南アジアの国々の中で、王室を有するタイとまでは言わないまでも、インドネシアは日本の皇室制度に好意的な関心を持っている。特に、歴代の大統領にその傾向が強い。数世紀にも及ぶオランダ植民地支配の体験、そして“天皇の軍隊”である日本軍が進攻し、日本軍政を経て、PETA(郷土防衛軍)が設立され、これが後の対オランダ独立闘争の核となった経緯などから、独立前後のインドネシアの民族主義者らにとって、日本の天皇は、まさに雲上の存在であった。
このことは、スカルノ初代大統領が、在任中に国賓・公賓としてなんと9回も二重橋を渡ったことからも容易に推察できる。天皇陛下に国家元首として対面することは、“独立の父”スカルノ大統領にとってさぞかし誉ある出来事だったのだろう。
スハルト第二代大統領は、宮内庁要覧に拠れば昭和・平成の両時代、計7回、皇居を訪れている。また、21世紀に入ると、メガワティ大統領が計3回、そして昨年6月、スシロ・バンバン・ユドヨノ現大統領が天皇陛下の接遇を受けた。
歴代大統領に限らず、少なくないインドネシア国民が、日本の皇室に大きな関心を抱いている。それは、現皇后陛下の御結婚時に、インドネシアで「Michiko」と命名された女の子がたくさんいたことからも窺い知れる。インドネシアのマスコミも日本の皇室の動きには強い関心を持っている。
収録曲は計21曲
そいうお国柄だからなのかどうかは定かではないが、皇太子雅子さまの御結婚時の十二単姿をそのままジャケットに使用した音楽カセットが、数年前からインドネシア国内(主にスマトラ島)で販売されている。『No.1 JAPAN Evergreen Best Seller』と題し、計21曲。インドネシア国内で大ヒットとなった五輪真弓の「心の友(Kokoro no Tomo)」や、谷村新司の「昴」、そして、テレサテンの「Goodbye My Love」、さらに松田聖子の「パラダイス」、喜多郎の「Matsuri」なども収録されている。ちなみに、ボーカルは別人のもの。
ニュース写真ならば納得もできるが、“商品”のパッケージに、皇太子妃殿下の肖像を堂々と使用する感性には、ただただ驚愕するばかりだ。感動的とさえ言ってもよい。このカセットの制作は首都ジャカルタに本社を置くPT. Atlanta Intermusic社。画像の使用に関して、日本大使館と接触したり、もしくは宮内庁の了解を得たものなのかどうかは、皆目分からない。まあ、しかし日本の音楽文化を紹介する特集カセットとしては、極めて象徴的な肖像を使用することで、所期の狙いは十分果たせたに違いない。“皇室外交”の一環と捉えるべきか?友好第一で“目を閉じて何も見えず”が妥当なのか?それとも“不謹慎”なのか?
来週の月曜日(2006.11.27)、ユドノヨ大統領は二度目の皇居訪問を予定している。
歌詞カード
【参考Website】
インドネシア文化宮:http://clik.to/GBI
GBIニュース(1999.7.29):http://www.harapan.co.jp/indonesia/gbi/gbinews990729.htm
GBIニュース(1999.9.2) :http://www.harapan.co.jp/indonesia/gbi/gbinews990902.htm
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