オスカル・ラワラタさんが首都ジャカルタに新ブティックをオープン予定
2007年1月、ジャカルタで再会したオスカルさんは、相変わらず、インドネシアのトラディショナルなテキスタイルで身を包んでいた
2006年12月、国際交流基金が東京で開催した『ASIA 5 Doreme』ファッションショーにインドネシア代表として参加したオスカル・ラワラタ(Oscar Lawalata)さんが、近く、首都ジャカルタに新たな独自ブティックをオープンすることになった。
昨年、筆者とのインタビュー(https://gbitokyo.seesaa.net/article/200612article_6.html)に答えて「イカット(絣)ですが、イカットを使っていったい何が生まれるのか?イカットの作り手は、素晴しい技術を持っていますが、その素材で何をクリエートしていくのかという点で困窮しています。僕は、そこに、自分の役目を感じています。正直、僕はイカットに関して余り分かっているとは言えませんが、トラディショナルなものから、モダンな時代へと向けて、橋渡し役ができるのではないかな、と感じています」と、インドネシアが世界に誇るイカット文化について熱く語っていたオスカルさん。
その情熱をストレートに表し、新ブティックの名前はズバリ『IKAT』。場所は南ジャカルタのパングリマ・ポリム通り。ソフトオープンは今年の中頃を予定している。
新店舗の基本コンセプトは、四つのラインから構成されている。それらは、「IKAT(絣)」、「LOCKCHAN(ロクチャン)」、「HIROSHIMA(広島)」、そして「KATUN KATUNKU(僕のコットン)」。
“未だ完璧にコンセプトやストラテジーを煮詰めているわけではありませんが、アイデアの源泉は極めて簡単なものです。つまり、僕のイデアリズムを体現したいってことです”と、オスカルさん。説明によれば、発想は、どのようにしたら豊かな伝統的なインドネシアン・テキスタイル文化を守り、発展させていくことが可能か、という自己への問いかけからだった。“インドネシアの若者自身が自国の文化に関心を払わない。彼らをも惹きつけて、さらに国際社会にインドネシア文化を発信していくにはどうしたらよいのか?そこから新ブティック構想が生まれたのです”
インドネシア文化に対する情愛と理想主義とが原動力となって、これらの四つのライン構想が生まれたそうだ。それぞれが特徴を持っている。例えば「IKAT」は、織物文化としての象徴。そして「LOCKCHAN」は、全ての要素を包括しているバティック文化としての象徴。「KATUN KATUNKU」は、エスニックな香りが漂う日常着たるコットン製品としての象徴。これらの三つのラインは、“テキスタイルそしてデザイン面でアジアを打ち出す”とのこと。そして「HIROSHIMA」は、“禅のスピリッツにも通じる相称的な日本文化を反映したもの”だそうだ。
オスカルさんは、これらの四つのラインを単にエスニックで伝統的なものにする気はない。あくまでも、コンテンポラリーで、未来志向のデザインを目指すという。
“この僕の試みが、やがてインドネシアの若者が自分たちの足元の文化を振り返るきっかけになってくれたら、どんなに素晴しいことでしょうか。同時に、国際社会に向かって、インドネシア民族が持つ豊かな文化を、ファッションを通して紹介していくことにも繋がることを強く願っています”
2006年8月にアロール県で実施された『第5回アロール・エキスポ』のMiss.アロール&Mr.アロールコンクールでは、県特産のイカット文化がモダンなファッションで紹介された
アロール県のイカットの“故郷”テルナテ島のウマプラ村。ガジャ(象)モチーフのイカットはウマプラ独自のイカット・モチーフ
2007年は、特にイカット(絣)に焦点を当てたいオスカルさん。そして2002年から、東部インドネシアのイカット文化の復活と発展に関心を払ってきたインドネシア文化宮(GBI)。両者は、多彩で豊かなインドネシア文化を国際社会に発信していきたいとの点で、共通認識とイデアリズムを持っている。そこで、早速、協力してイカット文化のイベントを開催することで合意を見た。2007年8月に、NTT(東ヌサトゥンガラ州)のアロール県で県政府とGBIが共催する『第6回アロール・エキスポ』に際して、オスカルさんがアロール県産のイカットを用いて数々のニューファッションを披露することになった。すでに、アロール県政府は、20数枚の多種多様なイカットの選択に入った。それらはやがてジャカルタのオスカルさんに送られる。そしてオスカルさんのマジックで生まれ変わったイカット製品は、県都カラバヒで行われるエキスポで、ファッションショーの形で紹介されることになる。もちろん、オスカルさんも“世界で二番目に美しい海底珊瑚”を持つと言われるアロール県を訪れる。
計画では、カラバヒの後、オスカル作品は首都ジャカルタで行われるファッションショーで国レベルのお披露目を経る。そして、その後、東京にやってくる。カラバヒ→ジャカルタ→東京の旅で、アロール・イカットはどんな変身を見せてくれるのだろうか。
また、インドネシア文化宮が本年6-7月に予定している、南スラウェシ州トラジャの画家マイク・トゥルーシーさんの個展にも、オスカル作品の参加が計画されている。それは、南スラウェシ産の絹織物を使ったオスカルさんデザインのファッション。マイク氏が描くトラジャ文化にオスカル・ファッションはどんな彩を添えてくれるのでしょうか。
【参考URL】
アジア発最新ファッションhttps://gbitokyo.seesaa.net/article/200612article_6.html
アロール島事典(日本語): http://alor.hp.infoseek.co.jp/
アロール県Website(英イ語): http://www.alor-island.com/
インドネシア文化宮:http://clik.to/GBI
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