バンカ島チュアル展のお知らせ(Pameran Tenun Cual Bangka Belitung)
インドネシア文化宮(GBI)は、2007年10月6日(土)~12月8日(土)、『バンカ島チュアル布展』を開催します。GBIは、2007年8月23日、バンカ・ブリトゥン(略称Babel)諸島州の州都パンカルピナンで、同州政府と共催で、第一回『伝統チュル布コンテスト』を実施しました。これは、チュアル(Cual)布が本来は同州のバンカ島を起源とするものの、これまで同州が南スマトラ州の傘下にあったためパレンバン文化として発展してきた史実から脱し、バンカ・ブリトゥン州の独自文化として復活させ、振興していく思いから企画されたものです。GBIが“州興し”プログラムの一つとして提案、エコ・マウラナ(Ir.H.Eko Maulana Ali, MSC)州知事の賛同の下、同州開発計画庁(Bappeda)、州商工局、州観光局の支援を受けて実施したものです。今回の展示会では、受賞作品を含め計15点を日本では初めて披露します。また、同州政府の協力で、観光紹介写真や特産の海産物(海老煎餅のクルプックなど)も同時展示します。ご期待ください。
【名称】 バンカ・ブリトゥン諸島州伝統チュアル布展
【期間】 2007年10月6日(土)~12月8日(土)11:00-18:00 但し日曜・祝日並びに最終日を除く第二&第四土曜日はお休みです。また、雨天などの悪天候の日も、事前予告無しに閉める場合があります。
【展示品】 コンテスト受賞作品など計15点、観光紹介写真、特産海産物など。
【上映】 同州の観光スポットを紹介したVCD
【主催】 インドネシア文化宮、バンカ・ブリトゥン諸島州政府
【後援】 じゃかるた新聞、「Bangka Pos」紙、メトロTV東京支局
【場所】 インドネシア文化宮(GBI) JR高田馬場駅より徒歩約6分。東京富士大学図書館前正門の向かい側のビル1階
【入場】 無料
シンガポールとジャカルタの中間地点、ジャワ海とナトゥナ海の接点に点在する大小の島々。バンカブリトゥン諸島州(Propinsi Kepulauan Bangka Belitung・略称Babel)は、かつて南スマトラ州の一角だったが、2000年に同州から分離、新たな州となった。錫と硅砂(ガラスの原材料)の産地として古くから知られるバンカ島とブリトゥン島。面積およそ81,700km2(内陸地は約20%の16,400km2)人口は約104万人。
鉱業で発展を遂げてきた同州も、“南スマトラ州の一角”としてのイメージから脱げ出せないジレンマにとらわれている。2007年4月25日に就任したばかりのエコ・マウラナ・アリ(Eko Maulana Ali)州知事が言う。「新州としての独自のアイコンを見つけ出さなければならない。バンカブリトゥン州を象徴する独自文化の発掘が急がれる」と。
テキスタイル文化面で見た場合、南スマトラ州は、一般的に“ソンケット・パレンバン(Songket Palembang)”と呼ばれる金糸刺繍の縫取織り布で広く知られている。特に絹糸を用いたソンケットは「Kain Limar」と呼称されている。リマール布の中でも特に有名なモチーフが「Kain Limar Muntok」と呼ばれる、バンカ島の西端に位置するムントック(Muntok。今日の西バンカ県の県都)でその昔に生まれた布である。しかし、これまでバンカブリトゥンが南スマトラ州の一角であったため、対外的には、バンカ島の布と言うよりも、パレンバンの布として知られてきた。だが、その名称が物語っているように、まさしく源流はバンカ島のムントックにあった。
リマール布は、簡単に言ってしまえば、イカット(絣)とソンケット(縫取り織り)の合体した布。イカット部分は、スマトラ島の多くの地域で見られるように、横糸を染めたもの(Ikat Pakan)で、カリマンタン島やNTT(東ヌサトゥンガラ)州の縦糸を染めたもの(Ikat Lungsi)とは異なる。
ソンケット・パレンバン(あるいはリマール布)の“原点”は、かつてバンカ島にあったチュアル(Cual)と呼ばれる布にあると確信するバンカ島の人々の間で、今、“チュアル布”の復活と復権を目指す動きが活発化している。言い換えれば、エコ新州知事が探そうとしている「バンカブリトゥン州のアイコン」の一つとして、チュアル布を復活させようとする試みだ。その中心にいるのが、州都パンカルピナン(Pangkalpinang)でチュアル布工房を営むマスリナ・ヤジッド(Maslina Yazid)さん。これまでに30名の織り子を育て、遠くない将来の、(ソンケット・パレンバンとは一線を画す)完璧なチュアル布復活を目指している。
左がバンカ(Bangka)島。右はブリトゥン(Belitung)島。
優勝作品。「初めて織ったチュアル布が優勝作品に選ばれるなんて信じられない」と、ブリトゥン島からやってきたマルカナ(Markana)さん(20歳)。西バンカ県のテンピラン村で見つかったチュアル古布にモチーフのヒントを得た。
スレンダン。サイズ:約59 X 188cm
第二位に輝いた、バンカ島のバンカ・インドゥック県都のスンガイリアットに暮らすマリアニ(Mariani)さん(30歳)が織り上げた。「西バンカ県のテンピラン村で見つかったチュアルの古布からモチーフを借りました」と。マンゴスチンの花びら、波、竹の子、瓢箪の種などがモチーフ。
サルン。サイズ:約84 X 174cm
コンテスト会場は、パンカルピナン市長公邸。26人の計34枚の新作チュアル布が展示され。GBI代表を含む計5名の審査員によってベスト5の作品が選ばれた。“チュアル布中興の祖”的存在のマスリナ・ヤジッドさんが展示品をチェック。
コンテスト会場の脇では、チュアル布の織りデモンストレーションも。
コンテスト開会式では、地元のモデルがチュアル布を用いたファッションショーを披露。
インドネシアを代表する若手デザイナーであるオスカル・ラワラタさん(中)と母親で有名女優のレギーさん(右)も審査員。左は、母親で、バンカ&ブリトゥン島の“チュアル布復興の母”でもあるマスリナからチュアル布の織り方を学び始めたばかりの大学生シャンドラさん。
チュアル布はファッション素材としても注目されている。モデルさんたちとオスカルさん(右から二人目)。
チュアル布は男性ファッションにも取り入られ始めている。モデルは地元の高校生。
チュアル布“発祥の地”であるバンカ島の最西端ムントックに暮らすラディア・カディールさん(63歳)。100-120年前に先祖が織ったチュアル布を大切に保管している。
チュアルの古布。およそ100年前に作られたという。シルク製で、見事なイカット技術。
【展示会場の様子】
【参考ブログ】
インドネシア文化宮(GBI)活動記録
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200610article_2.html
インドネシア文化宮活動記録(インドネシア語)Kegiatan GBI
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200610article_4.html
バンカ島で伝統チュアル布コンテストを実施(Kain Cual Provinsi Babel)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200708article_9.html
バンカブリトゥン州のチュアル(Cual)布の復活に賭ける
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200704article_8.html
インドネシアのコマ(独楽)文化(No.9)Gasing Indonesia
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200704article_7.html
バンカブリトゥン諸島州政府公式Website
http://bangkabelitungprov.go.id/
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