オスカルさんの新ブティクがオープン(Butik Oscar Lawalata Culture)
インドネシアを代表する若手デザイナーのオスカル・ラワラタ(Oscar Lawalata)さん(30歳)が、念願の新ブティックを首都ジャカルタのクバヨランバル地区・パングリマ・ポリム(Panglima Polim)7番通りにオープンした。昨年の半ばにもオープン予定でいたが、コンセプトの絞込みや、国内各地の布生産地の見学などに時間が費やされ、結果的にほぼ一年の遅れとなった。ブティックの名称も当初は「IKAT(絣)」を予定していたが、より広範なテーマをカバーできる「Oscar Lawalata Culture(OLC)」に決まったようだ。
新ブティックに並ぶコレクションは、「The Bodo」、そして「Lokchan」、「Katunkatunku」、そして「Ikat」。
かつて「Hiroshima」ブランドも考慮していた時期があるが、地名ということもあり、これは取りやめたようである。
地元紙のインタビューに対して、オスカルさんは、新ブティックのオープンは、ヌサンタラ(インドネシア)が抱える布の美しさへの感謝の印だと答えている。
昨年8月上旬、インドネシア文化宮(GBI)は、オスカルさんと共に、東ヌサトゥンガラ(NTT)州アロール県で開催された第6回「アロール県エキスポ」(ブログ参照:第6回アロール県エキスポで日本の竹製品を紹介 )に参加した。下見を含めて二度目のアロール島訪問となったオスカルさんは、地元産のイカットを使って幾つものドレスを仕立てた。そのお披露目のファッションショーが、エキスポ会場で行われた(ブログ参照:アロール県エキスポでオスカルさんのファッションショー)。これは、2002年から毎年、“島興し”プロジェクトとしてGBIとアロール県政府が共同企画している「エキスポ」にオスカルさんが共鳴して実現したものだ。『アロール島、そしてその他のNTTのイカット文化は本当に素晴らしい。今まで知らなかったことがインドネシアのデザイナーとして恥ずかしい。これからは、こういったトラディショナルな布文化に、モダンな要素を取り入れて、新たなインドネシアのテキスタイル文化として何か創造できないかチャレンジしてみたい』----オスカルさんは県都カラバヒでそう語っていた。
アロールでの感動的な試みの興奮が冷めやらない昨年8月下旬、GBIはオスカルさん、そしてお母さんで女優のレギーさんを誘って、スマトラ島南部の東方に浮かぶバンカ島を訪ねた。そこでは、GBIが地元州政府と共催で、初めての「チュアル布コンスト」(ブログ参照:バンカ島で伝統チュアル布コンテストを実施)を実施した。オスカルさんは、伝統ソンケットとイカットとを組み合わせたチュアル布に感動し、織り手の女性たちに、自分がデザインするモチーフで織ってもらいたいとも話していた。
オスカルさんは、二度目のアロール島訪問の後、フローレス島やティモール島西部地域も訪れ、各地で伝統イカットを収集したそうだ。ブティック「Oscar Lawalata Culture」を軸に、ヌサンタラ全域が秘める、豊かなテキスタイル文化を国内外に発信していきたいと願うオスカルさん。足元にある文化を見つめなおし、伝統文化を現代のファッション文化に積極低に取り込もうとしている。その情熱、そしてその若さに期待したい。
「Ikat」ブランド
上の三枚の画像は「The Bodo」ブランド
「未来のファッションに向かう伝統のイノベーション」
OLC(Oscar Lawalata Culture)のオープンニング会場で配布されたプレスキットの中に、「未来のファッションに向かう伝統のイノベーション」と題するオスカルさんのメッセージがある。どのような考えの下で、新たなブティックを立ち上げたのか、そして目指すオスカル・ファッションとは。すべての回答がそのメッセージに含まれている。要は、インドネシア(ヌサンタラ)全土に存在する多種多様な伝統タキスタイル文化を、時代を超えて、現代のモダン・ファッションにどのように活かしていくか?その一つの方法がOLCファッションだと言うのだ。
「OLCは、伝統的な、栄光ある衣服の価値観を現代のモダンファッションに開花させ、モードの世界に新たな創造とイノベーションを実現するというイデアリズムから出発しました。これによって、誇るに値する私たちの文化に対して、インドネシア国民が関心を喚起してくれることを望んでいます。インドネシアの文化に対する愛情、そしてインドネシアのテキスタイル文化史への認識を基に、さらには、伝統テキスタイル文化への関心が薄れてきているという現実を踏まえ、人々の日々の暮らしの中に、歴史的価値観の苗を再び芽生えさせ、そして育てていきたいと願っています」
格調高い文章で、オスカルさんは、インドネシアの各地で民族集団が営々と受け継いできた伝統テキスタイル文化を、自らの創作に取り入れることで、民族アイデンティティとしてのファッションの、あるべき未来像に回答を出そうとしているようだ。「ヌサンタラの各地で生まれ、育てられてきたテキスタイル文化の中には、畏怖の念を感じるほどの、哲学的で、そして神聖な布も少なくない」----オスカルさんが力説する。
OLCで展開する4つのブランドの概要は以下の通り
「The Bodo」----南スラウェシ独特のシルク製の伝統衣装からインスピレーションを得たもので、シンプルな形ながら魅力的なボリューム感を醸し出すコレクション。ボド服(Baju Bodo)をモダンにアレンジし、最新トレンドに仕上げた。
「Ikat」----世界に誇るインドネシアのイカット(絣)文化をベースに、スマトラ島から東はヌサトゥンガラ地域、そしてマルクで生産される伝統手法で織られたイカットを使い、そのユニークなモチーフをモダンな衣装に取り込んでいる。
「Lokchan」----バティック文化の中でも、今ではハイレベルな物が次第に消え去りつつあるロクチャン布。ロクチャン鳥(火の不死鳥・フェニックス)をシンボルに、バティック進化の姿に挑戦。
「Katunkatunku」----シンプルでカジュアルをテーマに、最高品質で、しかもエコ綿を用いたコレクション。色もすべて天然自然色染め。
オスカルさんとレギーさん(2007年9月ジャカルタの自宅で:撮影GBI)
オスカルさんがデザインしたヌサンタラ・テキスタイルを用いたお洒落な衣装。レギーさんとオスカルさん。
インドネシア文化宮(GBI)では現在、『ヌサンタラ・テキスタイル展』を開催中です。来る6月14日までの予定です。
【備考】画像は「Oscar Lawalata Culture」提供
【参考ブログ】
Boutique offers Oscar showcase(May 18, 2008 The Jakarta Post)
http://old.thejakartapost.com/yesterdaydetail.asp?fileid=20080518.F09
Oscar Peduli Warisan Tekstil Nusantara
http://www.kompas.com/index.php/read/xml/2008/05/24/11584498/oscar.peduli.warisan.tekstil.nusantara
ヌサンタラ・テキスタイル展は6月14日までPameran Tekstil Se-Nusantara
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200805article_11.html
ヌサンタラ・テキスタイル展(Pameran Tekstil Nusantara)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200803article_5.html
バンカ島で伝統チュアル布コンテストを実施(Kain Cual Provinsi Babel)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200708article_9.html
バンカ島で伝統チュアル布コンテストを実施(Kain Cual Provinsi Babel)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200708article_9.html
アロール県エキスポでオスカルさんのファッションショー
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200708article_5.html
第6回アロール県エキスポで日本の竹製品を紹介
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200708article_4.html
オスカル・ラワラタさんが首都ジャカルタに新ブティックをオープン予定
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200702article_1.html
アジア発最新ファッション
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200612article_6.html
インドネシア文化宮活動記録
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200610article_2.html
インドネシア文化宮活動記録(インドネシア語)Kegiatan GBI
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200610article_4.html
インドネシア文化宮2007年活動記録(Kegiatan GBI pada tahun 2007)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200712article_2.html
アロール島事典(日本語)
http://alor.hp.infoseek.co.jp/
アロール県Website(英イ語)
http://www.alor-island.com/
尚、「Baju Bodo」に関しては以下のURLを参照してみてください。
Baju Bodo, Salah Satu Busana Tertua di Dunia(Suara Pembaruan紙:2007.11.16)
http://www.suarapembaruan.com/News/2007/11/18/Gaya/gaya02.htm
Femina誌
http://www.femina-online.com/serial/serial_detail.asp?id=151&views=153
Sinar Harapan紙
http://www.sinarharapan.co.id/feature/Tren/2005/0607/tren02.html
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