北スラウェシ州紀行(21) トモホン10 Perjalanan ke Sulut (21)

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羊頭狗肉---という四字熟語は、羊の頭を抱えて犬の肉を売ること、転じて誤魔化し、インチキの意味で使われることが多い。つまりは、羊の肉の方が良くて、犬の肉は良くないということか。本当にそうなのだろうか?鯨を味わう食文化のない民族や国・地域の人々から見ると、鯨を食する民族や国・地域は、どうも野蛮な人、野蛮な国と映るようだ。そうだろうか?
筆者はクジラ肉は好きだ。というか、好きも嫌いも、その昔、小学校の学校給食では、頻繁にクジラ肉が使われていた。なんでも、敗戦国の日本の子供たちに、良質のたんぱく質を摂らせるために、戦勝国が「あんたらは、南氷洋の方にいるクジラでも捕って食べたら」との背景があったように聞く。
さて、ソウルオリンピック、そして北京五輪。いずれの地でも、開催前に、犬肉の販売自粛が起きたと聞く。世界の動物愛護運動の非難の対象にならないように、当面はやめておこう、となったからだ。今どうなっているのか、よく分からないが、双方の首都でオリンピックの後、犬肉が消えたとの話をニュースで読んだ記憶がない。
で、北スラウェシ州の高原の“花の街”トモホン(Tomohon)の食文化だが、これはミナハサ民族に大方共通することだが、犬のお肉は、けっして好事家の食材ではなく、ごくごく一般的な食肉になっている。その意味では、ソウルや北京となんら異ならない。世の中には「エーッ、ウソーッ!?犬食べるの?可哀想」とのステレオタイプの非難の声もあるでしょう。だったら、どうだろうか。牛や豚、鳥や魚のお肉をたべることは「可哀想」ではないのだろうか。共に命を授かった生物。いわんや、犬と同様に、家族の一員のように大事に、大事に育てられている牛や豚、そして鶏、さらには養殖の魚だって少なくはない。しかし、どうも犬の場合は、「いいんじゃないの。食べても」と躊躇せずに賛同する比率は、その他の食材に比べて小さいような気がする。
いわんや、ネコを食べているとしたらどうだろうか?「犬ならまだ分かるけど、猫となると、ちょっとね」との声も聞こえてくる。しかし、“花を愛でる”市民が暮らすトモホンでは、普通に犬と猫の肉が食されている。伝統的な食文化としてだ。トモホン公設市場を訪ねた時、『朝早く来れば、売っていたけれでも、売り切れちゃった。ネコ肉は品薄で直ぐに売れちゃうんだよね』と、なんでも肉屋のおじさんが言っていた。猫の丸焼きの姿は見ることができなかったが、犬の丸焼きは、結構な数が並んでいた。そう言えば、トモホン滞在中の二日間、市内、郊外、家庭内で一匹の猫さえ見ることができなかった。そこで、知人の画家ソニー・レンコンさんに尋ねると『いないかもね。いればすぐ売れるしね。みんな食われちゃったんじゃないの』---と冗談なのか事実なのか判断がつきかねる回答があった。
猫は別にして、犬が飼われているシーンはトモホン市内、郊外の至る所で見かけた。ソニーさん自身も、チェリーと言う名の雌犬(15ヶ月歳)を大切に飼っている。市場を訪ねて、犬の丸焼きを眺めた後、生きた犬に出会うと、「あなたたちも、いずれあの市場に並ぶのか」との余計なお世話の想像をしてしまう。が、どうやらこの想像、極端に間違ってはいないようだ。『ペットとして飼われていた犬だって、ここでは普通に売っていますよ。お金に困れば、売るでしょう、そりゃあ誰だって』と、なんでもお肉屋のご主人が淡々と話す。
ちなみに、西ヌサトゥンガラ(NTB)州のスンバワ(Sumbawa)島は、おそらくインドネシアのネコにとって“天国”の一つだ。そこでは、ノラ猫があちこちで、それなりに暮らしている。少なくとも人間に食べられる心配はない。但し、交通事故死はたまには起こるようだが。スンバワの猫とトモホンの猫。猫にとって人間との“共生”なら断然、スンバワに限る。しかし、そもそも食文化とは異文化であり、その文化差こそが、多種多様な、そして固有の文化の原動力になっているのかもしれない。

参照NTB州スンバワ島紀行(1) ノラ猫(Perjalanan ke Sumbawa, NTB) (1)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200808article_5.html


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まさに焼死体かのごとき犬の丸焼き。


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豚の顔、そして犬の丸焼き。人間の食欲とは、かくなるものか。


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もちろん、牛肉や、ヤギ肉、豚肉なども売っている。手前には丸焼きの犬。


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一日中、}鳴き声ひとつあげずに、織り重なりあいながらも、じっとしている犬たち。ペット用に売られているのではなく、もちろん食肉用。


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市場には、ニシキヘビも並ぶ。頭側の肉の方がよく売れるそうだ。


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画家ソニーさんの飼い犬。チェリーちゃん。まさか、ソニーさん、この犬は食わないだろうな...(ちょっと心配)

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ソンデール町の公共施設で飼われている黒犬。皆に可愛がられている風だったが.....


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トモホン郊外、火口湖で有名なリナウ(Linow)湖の湖畔の駐車場にいた、毛並みの良い犬。犬さらいに注意してね!


【参考ブログ】

北スラウェシ州紀行(20) トモホン9 Perjalanan ke Sulut (20)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_17.html

北スラウェシ州紀行(19) トモホン8 Perjalanan ke Sulut (19)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_15.html

北スラウェシ州紀行(18) トモホン7 Perjalanan ke Sulut (18)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_14.html

北スラウェシ州紀行(17) トモホン6 Perjalanan ke Sulut (17)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_13.html

北スラウェシ州紀行(16) トモホン5 Perjalanan ke Sulut (16)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_12.html

北スラウェシ州紀行(15) トモホン4 Perjalanan ke Sulut (15)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_11.html

北スラウェシ州紀行(14) トモホン3 Perjalanan ke Sulut (14)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_10.html

北スラウェシ州紀行(13) トモホン2 Perjalanan ke Sulut (13)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_9.html

北スラウェシ州紀行(12) トモホン Perjalanan ke Sulut (12)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_8.html

北スラウェシ州紀行(11) マナド美女 Perjalanan ke Sulut (11)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_7.html

北スラウェシ州紀行(10) 竹楽器 Perjalanan ke Sulut (10)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_5.html

北スラウェシ州紀行(9) ベンテナン布  Perjalanan ke Sulut (9)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_4.html

北スラウェシ州紀行(8) イカット文化 Perjalanan ke Sulut (8)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_3.html

北スラウェシ州紀行(7) マナドのお粥  Perjalanan ke Sulut (7)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_2.html

北スラウェシ州紀行(6) マナド(Manado)  Perjalanan ke Sulut (6)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_1.html

北スラウェシ州紀行(5) マナド(Manado) Perjalanan ke Sulut (5)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200809article_34.html

北スラウェシ州紀行(4) ブナケン(Bunaken) Perjalanan ke Sulut (4)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200809article_33.html

北スラウェシ州紀行(3) ブナケン(Bunaken) Perjalanan ke Sulut (3)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200809article_32.html

北スラウェシ州紀行(2) シーラカンス  Perjalanan ke Sulut (2)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200809article_31.html

北スラウェシ州紀行(1) マナド(Manado) Perjalanan ke Sulut (1)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200809article_30.html

マカッサルの「パニンクル」が二冊目の出版(INDONESIA di Panyingkul!)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200807article_3.html

マカッサル市民ジャーナリズムに支援の手を(Bantuan utk Buku Panyingkul)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200805article_8.html

マカッサル映画鑑賞&マカッサル文学講演(Film & Sastra Makassar)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200804article_2.html

西スラウェシの伝統船サンデックで黒潮海道を航海
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200707article_3.html

トラジャ文化&トラジャ語を学ぶインドネシア理解講座(Budaya & Bahasa Toraja)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200707article_1.html

トラジャ人画家マイク・トゥルーシー個展(Pameran Tunggal Mike Turusy)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200706article_10.html

トラジャ人画家マイク・トゥルーシー個展のお知らせ(Pameran Mike Turusy)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200705article_2.html

北スラウェシ州政府
http://www.sulut.go.id/new/?

マナド市観光局
http://www.manadokota.info/

NSTPB(North Sulawesi Torusim Promotion Borad)
http://www.north-sulawesi.org/index.html

北スラウェシ州サンギヘ諸島県
http://www.sangihe.go.id/

World Ocean Conference 2009
http://www.woc2009.org/

特定非営利活動法人 Manado Net Japan
http://manadonet.com/

Sulutlink Foundation
http://www.sulutlink.org/

北スラウェシ州トモホン市ホームページ
http://www.tomohonkota.go.id/

トモホン市フラワーフェスティバル
http://www.tomohonflowerfestival.com/

2008年トモホン・フラワー・フェスティバルの様子
http://www.tomohonkota.go.id/gallery.php

常夏のスラウェシ島(インドネシア)情報マガジン
http://www5d.biglobe.ne.jp/~makassar/

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