北スラウェシ州紀行(25) ワルガ Perjalanan ke Sulut (25) Waruga
ミナハサ民族のワルガ(Waruga)は、単なる墓標であるばかりではなく、身内との“一体感”を具現化する祖霊像的な意味合いも持つ。今では、一か所に公園墓地風にまとめられているが、かつては各家々の前庭や、門前に置かれていたことから考えても、その可能性が高い。考古学と文化人類学の調査を待たねばならないが、例えば、インドネシア最東端のパプア(Papua)州の南西部、アスマット(Asmat)県一帯に見られるアスマット民族のビスポール(Bis Poll)と、その存在意味が似通ってる。
アスマット地方では、今では完璧にクリスチャン化が進んでいるが、その昔は、祖霊信仰の地だった。各家々の前には、きまって十数メートルものビスポール(祖霊トテンポール)が立っていた。アスマットでは、人間は木から生まれて木に戻る、との人生観があった。そのため、人が亡くなると、故人の姿を長い木に彫りこんで、家の前に立て、いつまでも故人と一緒に暮らす、生活形態があった。強いて言えば、仏教の仏壇や位牌なども、書かれているのは戒名だけではあるが、ビスポールやワルガのレリーフに近い思想かもしれない。故人を忍び、いついつまでも一緒に暮らす考え方がその根底にある。
ワルガは一方で、故人の人柄や生前の活躍していた時代を想起させる“記念碑”的な意味合いも持つ。サワンガン村の少なくないワルガに、その主の生前の職業が描かれている。例えば、お産婆さん。村で生まれる赤ちゃんを最初に取り上げる、重大な役割を果たした彼女たちの、元気な頃の姿が生き生きと、レリーフに描かれている。
ワルガを一つ一つ巡ると、サワンガ村のかつての出来事、光景を容易に想像することができる。ミナハサ民族には、“SI TOU TIMOU TUMOU TOU”と呼ばれるミナハサ語の古い人生訓がある。意味は「人は人を生かすために生きる」。つまり「人は人のために生きる」ということ。ワルガは、「人のために生きた」人々を亡くなった後も、ビビッドに描き出している。
以下は亡くなったお産婆さんのワルガ。出産シーンが四面に描かれている。
サワンガン村のワルガ博物館。埋葬品が展示されている。
青銅製の器や剣、そして中国製と思われる大皿。カラフルなトンボ玉も。
ワルガ墓地入口には、ワルガの製作過程が壁に描かれている。
村の近くのタタアン山で岩を砕き、石棺を作る。
屋根部分と石棺を抱え、担いで一人で村に持ち帰る。
遺体を蹲踞(そんきょ)の姿勢で石棺に収める。新たな遺体は、前の遺骨の上に置かれる。
【参考ブログ】
北スラウェシ州紀行(23) ワルガ Perjalanan ke Sulut (23) Waruga
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_21.html
北スラウェシ州紀行(22) ワルガ Perjalanan ke Sulut (22) Waruga
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_20.html
北スラウェシ州紀行(21) トモホン10 Perjalanan ke Sulut (21)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_17.html
北スラウェシ州紀行(20) トモホン9 Perjalanan ke Sulut (20)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_17.html
北スラウェシ州紀行(19) トモホン8 Perjalanan ke Sulut (19)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_15.html
北スラウェシ州紀行(18) トモホン7 Perjalanan ke Sulut (18)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_14.html
北スラウェシ州紀行(17) トモホン6 Perjalanan ke Sulut (17)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_13.html
北スラウェシ州紀行(16) トモホン5 Perjalanan ke Sulut (16)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_12.html
北スラウェシ州紀行(15) トモホン4 Perjalanan ke Sulut (15)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_11.html
北スラウェシ州紀行(14) トモホン3 Perjalanan ke Sulut (14)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_10.html
北スラウェシ州紀行(13) トモホン2 Perjalanan ke Sulut (13)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_9.html
北スラウェシ州紀行(12) トモホン Perjalanan ke Sulut (12)
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北スラウェシ州紀行(11) マナド美女 Perjalanan ke Sulut (11)
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北スラウェシ州紀行(10) 竹楽器 Perjalanan ke Sulut (10)
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北スラウェシ州紀行(9) ベンテナン布 Perjalanan ke Sulut (9)
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北スラウェシ州紀行(8) イカット文化 Perjalanan ke Sulut (8)
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北スラウェシ州紀行(6) マナド(Manado) Perjalanan ke Sulut (6)
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北スラウェシ州紀行(5) マナド(Manado) Perjalanan ke Sulut (5)
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北スラウェシ州紀行(4) ブナケン(Bunaken) Perjalanan ke Sulut (4)
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北スラウェシ州紀行(2) シーラカンス Perjalanan ke Sulut (2)
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北スラウェシ州紀行(1) マナド(Manado) Perjalanan ke Sulut (1)
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マカッサル映画鑑賞&マカッサル文学講演(Film & Sastra Makassar)
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西スラウェシの伝統船サンデックで黒潮海道を航海
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トラジャ文化&トラジャ語を学ぶインドネシア理解講座(Budaya & Bahasa Toraja)
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トラジャ人画家マイク・トゥルーシー個展(Pameran Tunggal Mike Turusy)
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トラジャ人画家マイク・トゥルーシー個展のお知らせ(Pameran Mike Turusy)
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インドネシアの巨石文化(2) Budaya Megalitik Indonesia(2)
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インドネシアの巨石文化(4) Budaya Megalitik Indonesia(4)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200805article_10.html
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