北スラウェシ州紀行(33) 画家ソニー Perjalanan ke Sulut (33) Sonny

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“東の真珠(Mutiara Timur)”そして“北スラウェシの真珠(Mutiara Sulawesi Utara)”の敬称・愛称で呼ばれる、トモホン(Tomohon)在住の画家ソニー・レンコン(Sonny Lengkong)さん。『世界の画家の中では、ヴァン・ゴッホが一番好きかな。彼の全ての作品に共通する、あの線、そして筋。素晴らしい』と。『残念ながら、日本の画家については、未だ多くを知っていませんから、誰の絵画が好きかは言えません』とも。
ソニーさんは、まさに地方文化にどっぷりと浸かった画家と言えよう。常に、生まれ故郷のミナハサ(Minahasa)文化を作品テーマに据えている。ミナハサ人としてのアイデンティティの表現が強烈だ。それほどまでにミナハサ文化を愛し、ミナハサをキャンバスに転写している。“花の街”トモホンは、ソニーさんを魅了してやまない。アスター、カンナ、ユリ、グラジオラス、そして多種多様なラン。故郷の花々は、いつもソニーさんの創作意欲を刺激する。


上の画像は:2004年9月17~19日、首都ジャカルタのサヒッド・ジャヤ・ホテルで行われた個展のカタログ。



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当面のマスターピースだという作品『Dinamika Bendi(二輪馬車のダイナミズム)』2007年作。油絵。67 X 57cm。


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トモホンのアトリエの中庭。ソニーさん手作りの長椅子。そして“番犬”代わりのガチョウ。


そして最近では、世界レベルのダイビング・スポットであるブナケン(Bunaken)島周辺のサンゴ礁や熱帯の魚たちにも惹きつけられている。美術評論家のユスフ・スシロ・ハルトノ(Yusuf Susilo Hartono)が言っている。「ソニーの一連の作品テーマに見られる二輪馬車、牛車、ワルガ(Waruga:ミナハサ民族の古代の石棺)、カバサラン(Kabasaran:ミナハサの伝統舞踊)、カンナの花。全てが彼の故郷の光景を誇らしげに転写している。最近では、ソニーは動物にも関心を寄せ始めている。特に雄鶏だ。それから、ブナケンの珊瑚礁と熱帯魚、さらにラグーンに浮かぶ小舟。ミナハサの美しい世界がソニーの手で語られている」と。『確かに、僕は絵画を通してミナハサにある芸術と文化を世に出そうとしているのかもしれない。しかし、基本はやはり敬虔な心かな。花に、魚に、島に、舞踊に、湖に。言い換えれば、目の前に広がる全ての自然と生き物たちに対する敬虔な気持ちを、絵画という媒体で表現しているのかもしれない』---ソニー絵画哲学の原点だ。
ソニーさんの絵画手法は、極めて特異だ。絵筆はほとんど使わない。自らの掌、そして指が筆代わり。時には金属製のスプーンを用いることもある。指先で、絵具を引っ掻き、拭い、そしてまた引っ掻く。こうして、独特なソニー画風が生まれている。
ユスフ氏が書いている。「ソニーは時に、対照的な色彩のオーケストラを打ち出し、また時には曖昧で柔らかな色彩のオーケストラを演じている。色がキャンバスの上でオーケストラ演奏している」と。



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ソニーさんの命令なら兵隊並みの行動をするガチョウたち。上はお昼寝用のハット。お伽の国の長椅子。噴煙を上げるロコン火山を眺めながらの一服は止められない。


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アトリエで次男のジミー君(右)と絵画の設置。


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2007年10月26日~11月9日にマナド市内のホテル・クオリティで行われた個展のカタログ。


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作品『Kabasaran Tempo Dulu(昔のカバサラン)』2007年作。油絵。85 X 75cm。


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現代のカバサラン舞踊(2008年6月~7月のトモホン市フラワー・フェステシバルにて)。


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左は作品『Menyongsong Fajar(夜明けを迎える)』2007年作。油絵。70 x 90cm。右は作品『Kepak Sayap(羽ばたく)』2007年作。油絵。75 X 95cm。


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左上は作品『Kana Kuning(黄色のカンナ)』2007年作。油絵。45 X 55cm。下は作品『Ekspresi Bunga(花)』2007年作。油絵。95 X 75cm。右は作品『Aster(アスター)』2007年作。油絵。35 X 50cm。


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左は作品『Di Arena(闘鶏場)』2007年作。油絵。95 X 150cm。右は作品『Cari Makan(エサを探す)』2007年作。油絵。95 X 75cm。


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作品『Manado Tua(古マナド島)2004』 油絵(140 X 91cm)


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作品『Bunaken I, 2004』油絵 (70 X 90cm)


★★インドネシア文化宮(GBI)は、2009年、ソニー・レンコンさんの個展を東京で実施する予定です★★


【参考ブログ】


北スラウェシ州紀行(32) 画家ソニーPerjalanan ke Sulut (32) Sonny
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_35.html

北スラウェシ州紀行(31) 経済特区 Perjalanan ke Sulut (31) Kapet
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_34.html

北スラウェシ州紀行(30) コタモバグ Perjalanan ke Sulut (30)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_33.html

北スラウェシ州紀行(29) ブヤット湾 Perjalanan ke Sulut (29) Buyat
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_32.html

北スラウェシ州紀行(28) タルシウス Perjalanan ke Sulut (28)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_31.html

北スラウェシ州紀行(27)サンギヘ Perjalanan ke Sulut (27)Sangihe
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_25.html

北スラウェシ州紀行(26)サンギヘ Perjalanan ke Sulut (26) Sangihe
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_24.html

北スラウェシ州紀行(25) ワルガ Perjalanan ke Sulut (25) Waruga
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_23.html

北スラウェシ州紀行(24) ワルガ Perjalanan ke Sulut (24) Waruga
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_22.html

北スラウェシ州紀行(23) ワルガ Perjalanan ke Sulut (23) Waruga
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_21.html

北スラウェシ州紀行(22) ワルガ Perjalanan ke Sulut (22) Waruga
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_20.html

北スラウェシ州紀行(21) トモホン10 Perjalanan ke Sulut (21)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_17.html

北スラウェシ州紀行(20) トモホン9 Perjalanan ke Sulut (20)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_17.html

北スラウェシ州紀行(19) トモホン8 Perjalanan ke Sulut (19)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_15.html

北スラウェシ州紀行(18) トモホン7 Perjalanan ke Sulut (18)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_14.html

北スラウェシ州紀行(17) トモホン6 Perjalanan ke Sulut (17)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_13.html

北スラウェシ州紀行(16) トモホン5 Perjalanan ke Sulut (16)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_12.html

北スラウェシ州紀行(15) トモホン4 Perjalanan ke Sulut (15)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_11.html

北スラウェシ州紀行(14) トモホン3 Perjalanan ke Sulut (14)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_10.html

北スラウェシ州紀行(13) トモホン2 Perjalanan ke Sulut (13)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_9.html

北スラウェシ州紀行(12) トモホン Perjalanan ke Sulut (12)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_8.html

北スラウェシ州紀行(11) マナド美女 Perjalanan ke Sulut (11)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_7.html

北スラウェシ州紀行(10) 竹楽器 Perjalanan ke Sulut (10)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_5.html

北スラウェシ州紀行(9) ベンテナン布  Perjalanan ke Sulut (9)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_4.html

北スラウェシ州紀行(8) イカット文化 Perjalanan ke Sulut (8)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_3.html

北スラウェシ州紀行(7) マナドのお粥  Perjalanan ke Sulut (7)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_2.html

北スラウェシ州紀行(6) マナド(Manado)  Perjalanan ke Sulut (6)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200810article_1.html

北スラウェシ州紀行(5) マナド(Manado) Perjalanan ke Sulut (5)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200809article_34.html

北スラウェシ州紀行(4) ブナケン(Bunaken) Perjalanan ke Sulut (4)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200809article_33.html

北スラウェシ州紀行(3) ブナケン(Bunaken) Perjalanan ke Sulut (3)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200809article_32.html

北スラウェシ州紀行(2) シーラカンス  Perjalanan ke Sulut (2)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200809article_31.html

北スラウェシ州紀行(1) マナド(Manado) Perjalanan ke Sulut (1)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200809article_30.html

マカッサルの「パニンクル」が二冊目の出版(INDONESIA di Panyingkul!)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200807article_3.html

マカッサル市民ジャーナリズムに支援の手を(Bantuan utk Buku Panyingkul)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200805article_8.html

マカッサル映画鑑賞&マカッサル文学講演(Film & Sastra Makassar)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200804article_2.html

西スラウェシの伝統船サンデックで黒潮海道を航海
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200707article_3.html

トラジャ文化&トラジャ語を学ぶインドネシア理解講座(Budaya & Bahasa Toraja)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200707article_1.html

トラジャ人画家マイク・トゥルーシー個展(Pameran Tunggal Mike Turusy)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200706article_10.html

トラジャ人画家マイク・トゥルーシー個展のお知らせ(Pameran Mike Turusy)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200705article_2.html

北スラウェシ州政府
http://www.sulut.go.id/new/?

マナド市観光局
http://www.manadokota.info/

NSTPB(North Sulawesi Torusim Promotion Borad)
http://www.north-sulawesi.org/index.html

北スラウェシ州サンギヘ諸島県
http://www.sangihe.go.id/

World Ocean Conference 2009
http://www.woc2009.org/

特定非営利活動法人 Manado Net Japan
http://manadonet.com/

Sulutlink Foundation
http://www.sulutlink.org/

北スラウェシ州トモホン市ホームページ
http://www.tomohonkota.go.id/

トモホン市フラワーフェスティバル
http://www.tomohonflowerfestival.com/

2008年トモホン・フラワー・フェスティバルの様子
http://www.tomohonkota.go.id/gallery.php

常夏のスラウェシ島(インドネシア)情報マガジン
http://www5d.biglobe.ne.jp/~makassar/

インドネシアの巨石文化(2) Budaya Megalitik Indonesia(2)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200805article_7.html

インドネシアの巨石文化(4) Budaya Megalitik Indonesia(4)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200805article_10.html

サンギヘ県政府ホームページ
http://www.sangihe.go.id/

シタロ県データ
http://www.sulut.go.id/dataweb/sitaro.pdf

北セレベス滞在記(庄司栄吉画伯のトモホン滞在中のことが書かれています)
http://www5d.biglobe.ne.jp/~makassar/mks/shouji.html

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