アロール島の謎の壺(2) (Priuk Ajaib Pulau Alor, NTT) (2)
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皮肉にも、土器に関する情報源は、この牧師によって書かれた本の中にのみ、見ることができる。自著「Uit de duisternis tothet licht(闇から光へ)」の中で、牧師は、1920年に村民が彼に話した伝説物語について詳述している。概要は以下の通りだ。
ある日、コフプイ(Kohpoei)という名の男は、森の中で狩猟をしていた。突然、彼は赤い眼をして、巨大な枝角を持った白い鹿を見つけた。彼は、直ちに弓矢で鹿を撃つ準備を。ところが、態勢を整える前に、鹿が彼に話しかけました。『撃つではない。わしは善霊である!』と。恐れたコフプイは、弓を下げた。『あなたが決して再び鹿を狙わず、かつ毎年3月に供物を私のところへ持って来ると約束するのならば、豊作を保証する多くの善霊が住む場所を教えよう』と。
コフプイは、二度と鹿を撃たないと約束し、鹿に導かれて、たくさんの土器が置かれた場所へ着きました。鹿は言いました『ここは、豊作と雨の聖霊が住んでいる場所です。あなたが、聖霊たちを、わたしが言ったように扱えば、繁栄をもたらす豊作を得るだろう。毎年3月、あなたと村人たちは、供物を捧げるためにここに来なければなりません。米、トウモロコシ、塩、少しの鶏、そして豚を供えなければなりません。その時、女性や子供、それからよそ者を同行することは許されません。もしも、そういった者どもが来るようなことがあれば、あなたは、私が与えるこの剣で、彼らを殺さなければなりません。たとえ、彼らがあなたの奥さんや家族であっても。彼らは殺されなければならないのです。ここにあなたや村人が来る場合、真っ直ぐ前方を見なければならない。左、あるいは右に目を向けてはなりません』。
コフプイは注意深く話を聞き、そしてその日以来、彼と子孫らは村の伝統的なシャーマンとなった、という。
この伝説秘話は、キリスト教が全土に広まっているとは言え、今日のアロール島でまだまだ信じ続けられている。土器が、雨期の激しい雨の作用によって、土中から、あたかも“湧き出てくる”かのような現象を引き起こすのか、それとも本当に“超自然現象”が起きているのか?----宣教師ヴァン・ダレンの著作は、この点に言及していない。
その後、多くの部外者が、この現象の論理的な説明を見つけようとしている。ある者は、地殻構造上の変動によって土器が地中から出現しているとの説を主張し、またある人は、地中に隠れた樹木の巨大な根が張っていて、それが土器を生みだしている、と説明する。
しかしながら、多くのアロール島民は、論理的な説明を求めてはいない。しかし、それはアロール島民が迷信を軽視していることを意味しない。説明できない事象を、その通り受け入れる気持がアロール島民にはある。
アロール島においては、キリスト教が、過去のアニミズム信奉者に関する全ての証拠を完璧に消滅させたはずだった。
しかし、“土器信仰”は厳然と生き続けている。あたかも、祖先の聖なる信仰心が、土器の口から漂い出るかのように、今でも土器の“湧き出し”現象が続いている。古来の信仰心はまだまだ絶えてはいない、と反論するかのように、土器は神聖な呼吸を続け、必要な時に突然出現を繰り返している。
そして皮肉なことに、最近、新たな土器が、これまで湧いて出なかった地点にも出現するようになった。どこか?教会の隣の空き地に。
(注)
以上の情報は、アロール県で数年間、農漁村開発に従事したドイツ系NGOの現地職員で、現在ロンボク島のNGO本部に勤務するオランダ人のカルステン・ヴァン・デール・オオルド(Karsten van der Oord)氏が、インドネシア文化宮(GBI)の要請に応えて、南アロール郡で調査を行い、その結果をリポートしてきた内容の概要である。
また宣教師A.A. van Dalen著の『Uit de duisternis tot het licht(闇から光へ)』は、カルステン氏が、そのP37~P38をインドネシア語に翻訳したものである。
【参考ブログ】
アロール島の謎の壺(Priuk Ajaib Pulau Alor, NTT)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_29.html
アロール島で潜る(12) Diving di Pulau Alor・ Pantar, NTT(12)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_27.html
アロール島で潜る(11) Diving di Pulau Alor・ Pantar, NTT(11)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_26.html
アロール島で潜る(10) Diving di Pulau Alo &Pantar, NTT(10)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_25.html
アロール島で潜る(9) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(9)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_24.html
アロール島で潜る(8) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(8)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_23.html
アロール島で潜る(6) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(6)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_20.html
アロール島で潜る(5) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(5)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_16.html
アロール島で潜る(4) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(4)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_14.html
アロール島で潜る(3) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(3)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_13.html
アロール島で潜る(2) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(2)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_12.html
アロール島で潜る(1) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(1)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_11.html
第7回アロール県エキスポ画像リポート(2)Expo Alor ke-VII(2)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200808article_2.html
第7回アロール県エキスポ画像リポート(1)Expo Alor ke-VII
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200808article_1.html
第7回アロール・エキスポ情報(Expo Alor ke-VII)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200807article_2.html
オスカルさんの新ブティクがオープン(Butik Oscar Lawalata Culture)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200805article_12.html
アロール県エキスポでオスカルさんのファッションショー
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200708article_5.html
第6回アロール県エキスポで日本の竹製品を紹介
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200708article_4.html
第6回アロール・エキスポ情報(Expo Alor ke-VI)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200706article_11.html
アロール県がタマンミニにパビリオンをオープン
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200704article_4.html
Mr.おじいさん&Mrs.おばあさんコンテスト
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200611article_5.html
アロール島でミスコンを主催
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200611article_4.html
世界で二番目に美しい海中公園アロール島
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200611article_3.html
第5回アロール・エキスポで日本の絣&着物を展示
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200610article_7.html
第5回アロール・エキスポで寿司を握る
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200610article_6.html
アロール島事典(日本語): http://alor.hp.infoseek.co.jp/
アロール県政府公式ホームページ(インドネシア語)
http://www.alorkab.go.id/
アロール県Website(英イ語): http://www.alor-island.com/
インドネシア文化宮(GBI)活動記録
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200610article_2.html
インドネシア文化宮活動記録(インドネシア語)Kegiatan GBI
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200610article_4.html
「じゃかるた新聞」の「アロール島探訪」シリーズ記事
2002年5月28日 じゃかるた新聞掲載
アロール島探訪(1) 海辺で紡ぐイカット 伝統手法で民力向上
http://www.jakartashimbun.com/pages/alor01.html
2002年5月29日 じゃかるた新聞掲載
アロール島探訪(2) 連帯感を生む踊り 木に繋がれたブタ
http://www.jakartashimbun.com/pages/alor02.html
2002年5月30日 じゃかるた新聞掲載
アロール島探訪(3) ダイバー憧れのサンゴ礁 海の男が差し出す魚と酒
http://www.jakartashimbun.com/pages/alor03.html
2002年5月31日 じゃかるた新聞掲載
アロール島探訪(4) 海を渡ってきた銅鼓 今も生活に溶け込む
http://www.jakartashimbun.com/pages/alor04.html
2002年6月1日 じゃかるた新聞掲載
アロール島探訪(5) 島の文化を全国に宣伝 村へ戻ろう運動を展開
http://www.jakartashimbun.com/pages/alor05.html
Alor Divers(パンタール島)
http://www.alor-divers.com/
la P’tite Kepa(ケパ島)
http://www.la-petite-kepa.com/
Dive Alor(アロール島)
http://www.divealor.com/
皮肉にも、土器に関する情報源は、この牧師によって書かれた本の中にのみ、見ることができる。自著「Uit de duisternis tothet licht(闇から光へ)」の中で、牧師は、1920年に村民が彼に話した伝説物語について詳述している。概要は以下の通りだ。
ある日、コフプイ(Kohpoei)という名の男は、森の中で狩猟をしていた。突然、彼は赤い眼をして、巨大な枝角を持った白い鹿を見つけた。彼は、直ちに弓矢で鹿を撃つ準備を。ところが、態勢を整える前に、鹿が彼に話しかけました。『撃つではない。わしは善霊である!』と。恐れたコフプイは、弓を下げた。『あなたが決して再び鹿を狙わず、かつ毎年3月に供物を私のところへ持って来ると約束するのならば、豊作を保証する多くの善霊が住む場所を教えよう』と。
コフプイは、二度と鹿を撃たないと約束し、鹿に導かれて、たくさんの土器が置かれた場所へ着きました。鹿は言いました『ここは、豊作と雨の聖霊が住んでいる場所です。あなたが、聖霊たちを、わたしが言ったように扱えば、繁栄をもたらす豊作を得るだろう。毎年3月、あなたと村人たちは、供物を捧げるためにここに来なければなりません。米、トウモロコシ、塩、少しの鶏、そして豚を供えなければなりません。その時、女性や子供、それからよそ者を同行することは許されません。もしも、そういった者どもが来るようなことがあれば、あなたは、私が与えるこの剣で、彼らを殺さなければなりません。たとえ、彼らがあなたの奥さんや家族であっても。彼らは殺されなければならないのです。ここにあなたや村人が来る場合、真っ直ぐ前方を見なければならない。左、あるいは右に目を向けてはなりません』。
コフプイは注意深く話を聞き、そしてその日以来、彼と子孫らは村の伝統的なシャーマンとなった、という。
この伝説秘話は、キリスト教が全土に広まっているとは言え、今日のアロール島でまだまだ信じ続けられている。土器が、雨期の激しい雨の作用によって、土中から、あたかも“湧き出てくる”かのような現象を引き起こすのか、それとも本当に“超自然現象”が起きているのか?----宣教師ヴァン・ダレンの著作は、この点に言及していない。
その後、多くの部外者が、この現象の論理的な説明を見つけようとしている。ある者は、地殻構造上の変動によって土器が地中から出現しているとの説を主張し、またある人は、地中に隠れた樹木の巨大な根が張っていて、それが土器を生みだしている、と説明する。
しかしながら、多くのアロール島民は、論理的な説明を求めてはいない。しかし、それはアロール島民が迷信を軽視していることを意味しない。説明できない事象を、その通り受け入れる気持がアロール島民にはある。
アロール島においては、キリスト教が、過去のアニミズム信奉者に関する全ての証拠を完璧に消滅させたはずだった。
しかし、“土器信仰”は厳然と生き続けている。あたかも、祖先の聖なる信仰心が、土器の口から漂い出るかのように、今でも土器の“湧き出し”現象が続いている。古来の信仰心はまだまだ絶えてはいない、と反論するかのように、土器は神聖な呼吸を続け、必要な時に突然出現を繰り返している。
そして皮肉なことに、最近、新たな土器が、これまで湧いて出なかった地点にも出現するようになった。どこか?教会の隣の空き地に。
(注)
以上の情報は、アロール県で数年間、農漁村開発に従事したドイツ系NGOの現地職員で、現在ロンボク島のNGO本部に勤務するオランダ人のカルステン・ヴァン・デール・オオルド(Karsten van der Oord)氏が、インドネシア文化宮(GBI)の要請に応えて、南アロール郡で調査を行い、その結果をリポートしてきた内容の概要である。
また宣教師A.A. van Dalen著の『Uit de duisternis tot het licht(闇から光へ)』は、カルステン氏が、そのP37~P38をインドネシア語に翻訳したものである。
【参考ブログ】
アロール島の謎の壺(Priuk Ajaib Pulau Alor, NTT)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_29.html
アロール島で潜る(12) Diving di Pulau Alor・ Pantar, NTT(12)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_27.html
アロール島で潜る(11) Diving di Pulau Alor・ Pantar, NTT(11)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_26.html
アロール島で潜る(10) Diving di Pulau Alo &Pantar, NTT(10)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_25.html
アロール島で潜る(9) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(9)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_24.html
アロール島で潜る(8) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(8)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_23.html
アロール島で潜る(6) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(6)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_20.html
アロール島で潜る(5) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(5)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_16.html
アロール島で潜る(4) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(4)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_14.html
アロール島で潜る(3) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(3)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_13.html
アロール島で潜る(2) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(2)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_12.html
アロール島で潜る(1) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(1)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_11.html
第7回アロール県エキスポ画像リポート(2)Expo Alor ke-VII(2)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200808article_2.html
第7回アロール県エキスポ画像リポート(1)Expo Alor ke-VII
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200808article_1.html
第7回アロール・エキスポ情報(Expo Alor ke-VII)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200807article_2.html
オスカルさんの新ブティクがオープン(Butik Oscar Lawalata Culture)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200805article_12.html
アロール県エキスポでオスカルさんのファッションショー
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200708article_5.html
第6回アロール県エキスポで日本の竹製品を紹介
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200708article_4.html
第6回アロール・エキスポ情報(Expo Alor ke-VI)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200706article_11.html
アロール県がタマンミニにパビリオンをオープン
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200704article_4.html
Mr.おじいさん&Mrs.おばあさんコンテスト
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200611article_5.html
アロール島でミスコンを主催
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200611article_4.html
世界で二番目に美しい海中公園アロール島
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200611article_3.html
第5回アロール・エキスポで日本の絣&着物を展示
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200610article_7.html
第5回アロール・エキスポで寿司を握る
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200610article_6.html
アロール島事典(日本語): http://alor.hp.infoseek.co.jp/
アロール県政府公式ホームページ(インドネシア語)
http://www.alorkab.go.id/
アロール県Website(英イ語): http://www.alor-island.com/
インドネシア文化宮(GBI)活動記録
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200610article_2.html
インドネシア文化宮活動記録(インドネシア語)Kegiatan GBI
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200610article_4.html
「じゃかるた新聞」の「アロール島探訪」シリーズ記事
2002年5月28日 じゃかるた新聞掲載
アロール島探訪(1) 海辺で紡ぐイカット 伝統手法で民力向上
http://www.jakartashimbun.com/pages/alor01.html
2002年5月29日 じゃかるた新聞掲載
アロール島探訪(2) 連帯感を生む踊り 木に繋がれたブタ
http://www.jakartashimbun.com/pages/alor02.html
2002年5月30日 じゃかるた新聞掲載
アロール島探訪(3) ダイバー憧れのサンゴ礁 海の男が差し出す魚と酒
http://www.jakartashimbun.com/pages/alor03.html
2002年5月31日 じゃかるた新聞掲載
アロール島探訪(4) 海を渡ってきた銅鼓 今も生活に溶け込む
http://www.jakartashimbun.com/pages/alor04.html
2002年6月1日 じゃかるた新聞掲載
アロール島探訪(5) 島の文化を全国に宣伝 村へ戻ろう運動を展開
http://www.jakartashimbun.com/pages/alor05.html
Alor Divers(パンタール島)
http://www.alor-divers.com/
la P’tite Kepa(ケパ島)
http://www.la-petite-kepa.com/
Dive Alor(アロール島)
http://www.divealor.com/
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