2010年にも始まるワクデ島の遺骨収集　Pulau Wakde & Prajurit Jepang: インドネシア文化宮(GBI-Tokyo)

2009年12月21日

2010年にも始まるワクデ島の遺骨収集　Pulau Wakde & Prajurit Jepang

3月に次いで今年二回目となった、厚生労働省による西部ニューギニア域戦没者遺骨収集団が去る12月17日帰国した。3月の108柱のおよそ2.7倍に当たる291柱が無言の祖国帰還を果たした。彼らは、現在のパプア州の州都ジャヤプラ（Jayapura・旧ホランジア）近郊のプアイ村で見つかった77柱、そして玉砕の島として戦史に残るビアク(Biak)島で確認された214柱の旧日本軍将兵・軍属の遺骨・遺灰だ。

遺骨収集団に参加した岩手県奥州市のNPO『太平洋戦史館』の理事の一人である、横浜市在住の田中裕海（ひろみ）さんは、父・田中應海（まさみ）を西部ニューギニア北岸沖合いに浮ぶ小島・ワクデ島で亡くした。故田中應海大尉は独立野戦高射砲第40中隊に所属していた。田中さんの話によれば、戦後65年目の2010年にも、ワクデ島で初の公式の遺骨発掘作業が開始される見通しだ。

同島では、アメリカ公刊戦史によれば、1944年5月17～20日の戦いで、日本軍将兵の戦死が759名、捕虜4名。一方、米軍兵士の戦死は40名、負傷107名。日本軍側の資料によれば、連合軍上陸時点で、同島には約600名の日本軍将兵がいた。内訳は、守備主力部隊が、第36師団（田上八郎中将）第224連隊（松山宗右衛門大佐）第3大隊（土井初太郎少佐）の第9中隊（石塚修二中尉指揮下の133名）。そして砲兵大隊の一個小隊29名、集成重機関銃小隊（小山孝行少尉指揮下の35名）、独立野戦高射砲第40中隊、野戦高射砲第53大隊、五号無線一個分隊5名、師団通信隊15名、師団野戦病院15名、航空防空隊220名、船舶部隊27名、海軍部隊120名。

ワクデ島の戦いは、その後のビアク島の玉砕戦（1944年5月27日連合軍上陸）などの戦史の陰で、広く知られるところではないが、西部ニューギニア戦線では最初の“日本軍玉砕の地”である。ビアク島攻略作戦、そしてニミッツ米太平洋艦隊司令長官率いる中部太平洋方面連合軍によるマリアナ方面攻略作戦の航空作戦支援の面から、連合軍はワクデ島にある日本軍の飛行場確保を急いだ。

故田中應海（まさみ）大尉（左）。台湾から出征する前に撮影されたものと思われる。

【故田中應海大尉のプロフィール】

明治41年11月10日、長野市豊野町の宝蔵院で生まれる。、駒沢大学を卒業後、永平寺で僧侶の修行。昭和8年2月1日、現役兵として入営（二等兵）。昭和8年5月1日、幹部候補生に（一等兵）。同年8月1日、甲種幹部候補生に（上等兵）。同年10月1日、伍長。同年11月30日、軍曹。同年12月1日、現役満期除隊。翌2日、予備役編入。昭和9年5月10日、曹長に進級、見習士官に。演習召集に応召。同年7月10日、応召解除。同年9月、永平寺の求めに応じて、仏教普及のため台湾へ。昭和10年3月31日、少尉。昭和16年7月15日、台湾で応召。以降、経緯は定かではないが、第18軍（安達二十三中将）隷下の、通称「南海派遣猛第1751部隊」として東部ニューギニア方面に派遣されたものと推定される。昭和18年9月15日、中尉に進級。しかし、東部ニューギニア戦線の戦況悪化に伴い、昭和19年3月、第18軍と第4航空軍（寺本熊一中将）は、西部ニューギニアをも作戦地域とする第2方面軍（阿南惟幾大将）の隷下に移った。おそらく、この時期、独立野戦高射砲第40中隊は、東部ニューギニアから、西部ニューギニア・サルミの沖合いに浮かぶワクデ島へ移動したものと思われる。
昭和19年5月20日、ワクデ島で戦死。大尉に。