インドネシア独立65周年記念バージョン「インドネシア・僕の家」 Indonesia Rumahku
日本の終戦(敗戦)65周年は、そのままインドネシア共和国の独立65周年に重なる。“大東亜戦争”終了二日後の1945年8月17日、インドネシアは悲願の独立を高らかに宣言した。毎年、8月に入ると、インドネシア全土で、独立記念日に向けた化粧が施される。今年は、ラマダン(断食月)に重なるため、全国各地の式典は、飲み物・食べ物無しの、灼熱の陽光の下、目眩がするような光景が繰り広げられるのかもしれない。
さて、昨年12月16日付けブログで紹介した新曲「インドネシア・僕の家」のビデオクリップ第二弾が、独立65周年を前に、リリースされた。作ったのは、もちろんイルサン・ワラッド(Irsan Wallad)さん。作詞作曲は、美しいインドネシア語で定評があるウィカ(Wieke Gur)女史。今回の作品は、インドネシアが持つ“多様性”を散りばめた感がする。最西端アチェの伝統打楽器ラパイ(Rapai)の演奏シーンが入り、また最東端パプアやカリマンタンの光景なども織り交ぜて編集されている。しかし、スポンサーなのか、国営石油会社プルタミナ(Pertamina)のビルやロゴが頻繁に映し出される点は閉口。
以下は、2009年12月16日のブログ記事再録です。
インドネシア語が乱れてきている、と思う。インドネシア国内での話しだ。それもかなり重傷だ。危機感さえある。一言で言えば、英語&インドネシア語会話の氾濫だ。
スハルト長期独裁政権の崩壊から早や11年。あの“開発の父”の称号を自ら演出し、半恐怖政治にも近い有無を言わさぬ強権の下、経済発展を最優先させた“新秩序”時代でさえ、正しく、きれいなインドネシア語の使用が求められた。それに伴って、外国語表記の標示、例えばホテルやレストランなどは、英語表記を改め、インドネシア語化を余儀なくされた。
言語政策に関して、あの時代が良かったとはもろ手を挙げて賛同はしない。しかし、昨今、特に、民主化が始まって以来のインドネシアは、こと言語に関する限り、非インドネシア語化が加速度的に進展している。英語を流暢に話す大統領が「知的」と思われ、「賢い」と思われる風潮が、今日のユドヨノ政権まで続いている。そう言えば、筆者が現ユドヨノ(SBY=Susilo Bambang Yudhoyono)大統領がまだ国軍(TNI)領域参謀長だった1999年7月当時、単独インタビューを行った時のことだが、ユドヨノ中将(当時)は、会見の直前まで、白人女性教師から英会話の個人レッスンを受けていた。英語をKuasaiする(抑える)ことは、もはや10年前から、未来の指導者として欠くことのできない条件だったのかもしれない。
で、昨今のインドネシア語事情だが、マスコミを始め、エリート層の間を中心に、半分インドネシア語、残り半分が英語といった会話が常日頃、いたるところで見かけられるようになってきている。それはあたかも、「英語ができなければ恥ずかしい、しかしインドネシア語がいいかげんでも恥ずかしくはない」といった思いが心中にあるかのようにも映る。
インドネシア国民教育省傘下の国立国語研究所によれば、現在インドネシアには746の言語が存在する。最東端の西部ニューギニア地域(パプア)のマイナー言語を総て加えれば、おそらくその数は軽く数千に達する。
多くの民族集団(Suku Bangsa)から構成される多民族国家インドネシア。その独立と成熟に果たしたインドネシア語の役割は論を待たない。国家としてのインドネシア、民族としてのインドネシア人、統一言語としてのインドネシア語---だったはずだ。インドネシア語の加速度的な乱れ、そして英語の蚕食傾向。インドネシア人はインドリッシュ(Indonesia+English)を母国語に換えようとしているのか。
友人で作詞作曲家のウィカ(Wieke Gur)女史が嘆いている。日本語もある程度Kuasaiする彼女は、現在オーストラリアに住み、インドネシア語の普及に力を注いでいる。外国人のインドネシア語学習のために、英語でインドネシア語On line Learningも立ち上げている。美しいインドネシア語の歌詞で、これまでに幾つものヒット曲を世に出してきたウィカさんも、昨今のインドネシア語事情には閉口気味だ。もう我慢ならないとばかりに、去る10月には、インドネシアを代表する日刊紙『Kompas』紙上で、三度にわたって、「インドネシア語。学ばなければいけないのは誰なのか?」と、自国民に問いかける一文を寄せている。
そのウィカさんが、大好きな、美しいインドネシア語を使って新たな歌を生み出した。タイトルは『Indonesia Rumahku(インドネシア・僕の家)』。そしてこの歌をベースに、友人のイルサン(Irsan Wallad)さんがカメラを握り、ビデオクリップを製作した。イルサンさんは、建築家である傍ら映像プロデューサーもこなす多彩な才能の持ち主。
『だってインドネシアは私の家だもの』と謳う子どもたち。民族アイデンティティの再確認が必要とされる時代が来てしまったのか。それとも、こうして多民族複合国家インドネシアは進化を遂げようとしているのか。コーラスを聴きながら、じっくりと考えてみたい。
「Indonesia Rumahku(バージョン2)」
Indonesia Rumahku | v2.1
http://www.youtube.com/watch?v=4CHFMH_gJmM
「Indonesia Rumahku(バージョン1))」
INDONESIA RUMAHKU | v1.3
http://www.youtube.com/watch?v=dPWH9SQJac4
INDONESIA RUMAHKU(インドネシア 僕の家)
Lyrics and Music : Wieke Gur
Arrangement : Elfa Secioria
Singers : Elfa's Youth Choir
Kubangun hidupku
dengan asa dan mimpi,
percaya diri di atas tanah airku
neg’riku cintaku Indonesia Raya
Aku perduli
dimanapun berada
Selalu kujaga
martabat bangsaku Indonesia Raya
Aku anak bangsa penjelajah jagat raya
menuntut ilmu, berkarya di panggung dunia
rinduku kan tiba 'tuk berlabuh kembali
Karena Indonesia adalah rumahku
Aku anak negeri dari bangsa yang merdeka
inginku mengukir adikarya nan digdaya
demi tanah airku, tumpah darahku
Karena Indonesia adalah rumahku
ウィカさんのホームページ
http://www.wiekegur.com/
ウィカさんのインドネシア語ホームページ
http://www.bahasakita.com/
この中の「Vocabulary」の「Glossary」コーナーに、インドネシア文化宮提供のバンカ島のCual布やロテ島の伝統楽器Sasanduの画像が掲載されています。
ウィカさんが『Kompas』紙に寄せた署名記事。
Maaf, saya agak sulit bicara bahasa Indonesia ...
http://oase.kompas.com/read/xml/2009/10/22/01270574/maaf.saya.agak.sulit.bicara.bahasa.indonesia....
Bahasa Indonesia, siapa Yang Seharusnya Belajar?
http://oase.kompas.com/read/xml/2009/10/29/01380419/bahasa.indonesia.siapa.yang.seharusnya.belajar
Bahasa Indolish
http://oase.kompas.com/read/xml/2009/11/24/17574261/bahasa.indolish
イルサンさんのホームページ
http://www.anakband.com
http://www.youtube.com/icanwallad
画像はイルサンさん提供(Photos: Irsan Wallad)
作詞家ウィカさんの新曲「インドネシア・僕の家」 INDONESIA RUMAHKU
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200912article_16.html
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