『インドネシア・仮面と彫像の世界展』12月18日まで開催中 Pameran Kedok RI
2010年9月18日(土)、『インドネシア・仮面と彫像の世界展』が始まった。別名ヌサンタラ(Nusantara・島嶼国家)のインドネシアは、(おそらく)世界最多の仮面文化を有し、同時に世界最多種の彫像文化を併せ持つ。
スマトラ島、ジャワ島、バリ島、そしてカリマンタン島。さらには西ヌサトゥンガラ(NTB)や東ヌサトゥンガラ(NTT)州の仮面・木彫は、祖霊信仰との関連で、イスラム、キリスト教エリアのいずれの地においても、その精緻で芸術性の高い文化として発展を遂げてきた。
近年、それらの多くが換金商品の様相を色濃くし、また、バリ島を始めとする世界規模の観光地で、“魂”無しの各地の、偽物の祖霊像が数多く売られる時代へと変貌している。民芸品と割り切れば、観光ビジネスと思えば、仕方のない現象だろう。
インドネシア文化宮(GBI)は、1970年代から、ヌサンタラ各地で、消滅寸前の、本物の仮面・彫像の収集に着手した。それらの多くを、現パプア州(旧西イリアン・イリアンジャヤ)アスマット(Asmat)地方の彫像が占めている。
今回の展示では、スマトラ島最南端のランプン州、中カリマンタン州、フローレス島、スンバ島、ティモール島の仮面、そして原始美術として世界的に知られるアスマット地方の祖霊像を中心に、ヌサンタラの豊かで崇高な“森の文化”に焦点をあてたい。
【名称】 インドネシア・仮面と彫像の世界(Pameran Budaya Kedok & Patung Indonesia)
【期間】 2010年9月18日(土)~12月18日(土)11:00-17:30 但し、日曜・祝日と、第2&第4土曜日(9/25、10/9、10/23、11/13、11/27、12/11)はお休みです。また、激しい風雨を伴う悪天候、さらに取材活動に伴って事前通告無しに、閉めることもありますので、予めご了承お願い致します。
【展示品】 インドネシア全土から収集した仮面約30点、祖霊彫像約70点。
【場所】 インドネシア文化宮(GBI) JR高田馬場駅より徒歩約6分。東京富士大学高田記念館正門向かい側のビル1階(添付地図参照)東京都新宿区下落合1-6-8(TEL:03-5331-3310 or 03-3360-9171
【入場】 無料
展示会場の光景
カリマンタン島ダヤク民族の収穫祈願仮面。
アスマットの頭蓋骨像:1950年代にキリスト教が本格的にアスマット地方に入り込むことに伴って、喰人や首狩りの伝統も徐々に後退。その代わりに頭蓋骨文化を木彫に求めるようになった。シレッツ川中流部の村で製作されたといわれるこの頭蓋骨像は、サイズが高さ14.5cm、最大横幅17.5cm、最大奥行き20cm。およそ30度の角度で前方を見据えている。
1950年代に製作されたアスマットのジパエ・霊魂の衣装
日本のなまはげ文化にも近い、西ティモールTTU県の子供をしつけるための祖霊仮面
カリマンタン(旧ボルネオ)島の中カリマンタン州で、98年前の1912年に製作された仮面。地元ではサバブカ(Sababuka)と呼称される、神聖な仮面。記録によれば、中カリマンタン州の中央付近に位置するカティンガン(Katingan)県のカラン(Kalang)村で製作されたもの。3体の男性像、4体の女性像、さらに1体の精霊像の計8体が作られた。しかしながら、キリスト教の布教と共に、これらの精霊信仰の仮面は逸散したが、インドネシア文化宮(GBI)は、2007年8月までの数年を費やして、それら8体の収集に成功した。
これら計8体の精霊像は、過去一世紀に秘儀「Tiwah」の場で、わずか3回しか使用されたことがないとのことです。それらは、1912年に、カティンガン県のハンパラム(Hampalam)村で実施され、そして1931年に、カティンガン上流県(Hulu Katingan)のTbg Mangguで実施され、そして最後に1955年、カティンガン県のカラン(Kalang)村で行われたそうです。8体の仮面が揃うとき、超自然のパワーが生まれる、と地元では信じられていました。
1980年代後半に、アスマットのカスアリネン海岸にある村で製作されたもの。一本の板根(樹木の地表部分で大木を支えるように四方八方に板状の根が成長する)から彫り上げたもので、重量はおよそ4.4kg。全高約1.44m。底部の奥行きおよそ34cm。アスマット地方では、通常この板根部分は、ビス・ポール(祖霊像)の、透かし彫り先端部として応用される。この透かし彫り突き出し部分は、一般的に“ペニス”の意味を持つと理解されている。この部分には、S字型モチーフや年輪鳥そしてヒクイドリのくちばしなどが掘り込まれる。この“ペニス”部分はビス・ポールの最も重要なパートであり、霊力と勇気、豊饒と繁栄を約束するシンボルとして信じられている。
この彫刻の場合、女性像が計7名、男性像が計6名、そして頂点に一羽の犀鳥(サイチョウ)が彫られている。また、ヘビが一匹、石器が2個彫り込まれている。
アスマット地方の神話である「フメリピッツ(創造主で“風の人”の意味)」に拠れば、天から地上に降りてきた創造主は、丸太をくり貫いて男女の像を彫った。次に太鼓を作った。トカゲの皮で覆って、太鼓を打ち鳴らすと、その男女の人形は立ち上がり、リズムに合わせて踊り、歌い始めた。そうして人間としてのアスマット人が誕生した、と。つまり、人間は木から生まれたという神話。「アスマット」とは、地元の言葉で「真実の人間」、「我々は木だ」を意味する。木から生まれたと信じるアスマット人は、死ぬと身内の手で木の彫刻になる。ここに、世界的に評価が高い原始美術彫刻が生まれ、育まれた背景がある。
【インドネシア文化宮への道順】
JR高田馬場駅より徒歩約6分。さかえ通りを進み、神田川の橋を越え、新宿区立図書館方向へ。東京富士大学高田記念館正門の向かい側のビル1F(東京都新宿区下落合1-6-8 TEL:03-5331-3310)
【関連動画】
パプア州のアスマットへ(1) ~(8) Ke Asmat, Papua, Indonesia
http://www.youtube.com/watch?v=w6k09Tozsf4
http://www.youtube.com/watch?v=-8fkoFVSU18
http://www.youtube.com/watch?v=PYk3-HQeZtI
http://www.youtube.com/watch?v=lUO97Ak0ixg
http://www.youtube.com/watch?v=DmYPxCZDMYY
http://www.youtube.com/watch?v=hIqSMUs5gUw
http://www.youtube.com/watch?v=-l5EhHYdQwY
http://www.youtube.com/watch?v=_0bnyZQE1eM
【参考ブログ】
『インドネシア・仮面と彫像の世界展』が9月18日(土)スタートPameran Kedok RI
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201009article_18.html
インドネシア・仮面と彫像の世界展(Pameran Budaya Kedok & Patung RI)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201009article_15.html
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