インドネシア最東端パプア州のゴミ問題　Isu sampah di tanah Papua: インドネシア文化宮(GBI-Tokyo)

2010年12月14日

インドネシア最東端パプア州のゴミ問題　Isu sampah di tanah Papua

元パプアTV記者のリッキー・ダジョ(Ricky Dajoh)さんから、パプア州の州都ジャヤプラ(Jayapura)の近況を伝える画像が届いた。人口増加の渦中にある、かつての“インドネシア最東端のフロンティア”たるジャヤプラ。エコな生活が普通だった彼の地にも、近代文明の荒波が急激な勢いで押し寄せている。それは、モラルの崩壊をももたらしている。

州の顔でもある州政府庁舎。ジャヤプラ湾（フンボルト湾）、そして隣国PNG（パプアニューギニア）に続く山並みを望むその地は、美しい州都の憩いの場ともなっている。毎夕、日曜日、多くの市民が州庁舎から道路と護岸壁を隔てた砂浜に降り、静かな波音を楽しんでいる。

パプア州庁舎の眼前の海辺。凄まじい数のゴミボトル（撮影：Ricky Dajoh）
海側から見たパプア州庁舎（撮影：Ricky Dajoh）

しかし、リッキーさんは言う。「特別自治のゴミ。掃除をしても、すぐにゴミの山が。州庁舎をみすぼらしく着飾るアクセサリーなのか」と。パプア州は、特別自治法に基づいて、高度な自治が認められている。独立の動きを規制する目的をも持った同法は、確かに、政府要職を地元出身者で占める結果をもたらせた。しかし、一方で、背任や汚職などのモラル崩壊をももたらせている。

州都ジャヤプラ（撮影：パプアTV）

そのモラル瓦解の延長にゴミ問題があるのか。いや、モラルを論じる前に、処理施設を持たない地域に、一気にプラスチックやペットボトルなどの不燃容器が大量に入ってきて、しかも住民がそうした島の外から運ばれてきた新商品を、無垢に受け入れていった背景こそが遠因なのかもしれない。

このことはインドネシア全土でもそうなのだが、中央からの距離に比例する形で、ゴミ問題が深刻化している。リサイクルするにも、余りにも遠隔地であり、収集や運賃コストの壁から、地元でゴミとして自然界に廃棄される傾向が続いている。

州都ジャヤプラ（撮影：Ricky Dajoh）

パプア州でいえば、南西部のアスマット(Asmat)地方や南東部のメラウケ(Merauke)でも、さらに中央高地のワメナ(Wamena)盆地でも同様な問題に直面している。固い地面がないほどの湿地帯ではあるが、満潮に伴って海水が200kmも奥地まで入り込むアスマットでは、飲料水の確保は大変な作業だ。そういった社会に、ペットボトルの水がどんどん入り込んで、そして容器はそのまま床下や海辺へ投棄されている。メラウケでは、市郊外のサバンナ地帯の灌木の隙間に大量の不燃性のゴミが山のように捨てられている。

ワメナ(Wamena)の街中、道路際に無造作に捨てられたゴミ（撮影：GBI）

NTT（東ヌサトゥンガラ）州などでは、ペットボトルを海藻などの養殖用浮きとして再利用している。コバルトブルーの海に浮かぶ透明ボトルは、景観を台無しにしてはいるが、ゴミ問題の視点から見ると、再利用の試みは称賛に値する。だが、廃棄されるペットボトルの量が、再利用の量を遥かに上回っていることを考慮すると、ゴミ処理問題が火急の仕事であることは論を待たない。

NTT州政府の環境担当官がかつて筆者にこう言ったことがある。「大人たちに言ったって駄目ですね。彼らの多くは全く気にしていない。そこで、州政府としては、学校を通じて子供たちに環境保護の大切さを教えています。子供たちが環境問題に目覚めれば、やがてその子たちが親を諭していくことでしょう」と。

インフラ整備の開発援助も、未来の発展を支える一つの要素になることも少なくない。しかし、中央から遠く離れた島々での、不燃ゴミと環境問題の解決に結びつくような知識と技術の供与はできないものだろうか。それも、コストを可能な限り低く抑えて。ゴミ問題と言うと、これまでとかく首都ジャカルタや商都スラバヤなどの大都市での無償小規模援助に留まってきた。一本のマングローブを植えることも大切だが、一本のペットボトルをマングローブ林に浮かせないことも同時に進めなければいけない。