芳野未央のアロール島紀行「ウォーレス線を越えろ!」(No.16) Ke Pulau Alor,NTT
インドネシア文化宮(GBI)は、2002年~2008年の7年間にわたって、NTT(東ヌサトゥンガラ)州アロール県(Kab.Alor)との共催で、文化活動を軸とした島興しプロジェクトである大文化祭『エキスポ・アロール』を実施しました。“海のシャングリラ”と言っても過言ではない、美しい海底サンゴの園を有するアロール島とパンタール島、そしてブアヤ島、テルナテ島、プラ島、ケパ島などから成るアロール県。
GBIの呼びかけに応じて、これまで延べ数百名の日本人が現地を訪れた。そして、今夏、ナタラジャ・バリ(Nataraja Bali)を主宰するバリ舞踊家の芳野未央さんが「ウォーレス線を超える」との長年の夢実現を目指して、アロール島に旅立った。中学生の時、初めてバリ舞踊を見て感動。高校に入ると直ちに舞踊練習に着手。大学時代にはバリ島通い---と、芳野さんとバリ島との付き合いは筋金入り。
そして、卒業論文のテーマに「バリ島のコオロギ相撲」を課題に選び現地調査。バリ舞踊からコオロギまで。そういえば、あの『昆虫記』のジャン・アンリ・ファーブルも、昆虫研究の一方で、作曲家としての顔をも持っていた。ひょっとすると、芳野さん、舞踊家の裏面に博物学者の姿を隠しているのかもしれない。以下、シリーズでお届けする芳野未央の『ウォーレス線を越えろ!』紀行。
アロールの海(画像:Alor Divers)。
バリ島の東側には、ウォーレス線が通っている。ウォーレス線は、アルフレッド・ウォーレスが発見した生物の分布境界線だ。バリ島はアジア区。ロンボク島以東はオーストラリア区。ウォーレスは、マレー諸島(現インドネシア)の採集旅行を通して、ダーウィンと同時期に独自に進化論に到達した。進化論の島はガラパゴスだけじゃない。インドネシアだって進化論の島々なのだ。(ウォーレスの『マレー諸島』は、旅行記としてとても面白いので、ぜひご一読ください。)インドネシアに通い始めて二十年以上経つが、実は、バリ島より東側に行ったことがない。今回、とうとうウォーレス線を越えてきた。
●2010年6月14日(月) アロール島
----スノーケルポイント・ジプシ----
宿に戻って、さてどうするか。午後の予定が決まってない。海かな、やっぱり。近くで泳げるのかな。宿のおばちゃんに聞いてみよう。
「あのー、スノーケルに行きたいんですが、歩いて海に行けますか?」
「どこの海に行きたいの?」
「えーと、アロールブサール?」
適当に言ってみる。私は方向音痴で距離感も分からないので、一度行った場所でも見当がつかない。
「遠いわよ! 歩いて行くなんて大変よ」
じゃあ、オジェック(バイクタクシー)で行くのが妥当なのかな。
「それじゃあ、オジェックってどうやって探すのですか? 海に行って、帰りは1~2時間後にまた来てもらえばいいかな?」
「一人で?」
「はい」
おばちゃんは、ちょっと待て、オジェックも適当な奴なんか拾ったらだめだ、私が親族の中から探してやるから、ちょっと部屋で待ってろ、と言う。うーむ。そういう感じか。オジェックの拾い方も勉強したかったのだが、その辺の道を流してるってもんでもないのかな?
アロールの海を潜る。
http://www.digibook.net/d/219483ffa018b03d271cb9257b69c436/?viewerMode=fullWindow
アロールの代表的ダイビングポイント(提供:Alor Divers→http://www.alor-divers.com/)。
部屋で用意をして待っていると、しばらくして呼ばれた。行ってみると、若い男の子。中学生かもしれない。私より一回り小さく、自分の体重が申し訳なくなる。(バイクの二人乗はやっぱり軽い方が楽)。おばちゃんのイトコの子供(スププってイトコだっけ?)で、カシール君という。
「この子が、ミオが泳いでる間もずっと見守ってるから。あんたが一人にならないようにするからね」
あら、ずっと張り付きで居てくれますか。行き帰りの足だけのつもりだったが、ここでも手厚いケアをつけていただいてしまった。ありがたい。料金は75000Rpで、5000Rpは紹介料としておばちゃんに入った模様。
アロール・クチール村を海上から望む(画像:GBI)。
ケパ島(画像:GBI)。
テルナテ島西南部で潜る(画像:GBI)。
サバンジャール海岸。遠方にプラ島が(画像:GBI)。
さて、ちゃんとヘルメットをかぶり、スノーケル道具と着替えの袋をバイクの前に置いてもらい、出発。どこに行くのか聞かれたので、「アロールブサール? スノーケルができるところならどこでもいいんだけど」
「じゃあ、知ってるところに行きます。あ、その前にちょっとガソリン入れて行くから、道それるよ」
海沿いの道から、ちょっと曲がって雑貨屋(ワルン)でガソリンを入れる。(インドネシアでは、ガソリンスタンドではないところでガソリン売ってるのは一般的です)。ガソリン代を渡そうとすると、それは料金に含まれてるから、と断られる。欲がないというか、ちゃんとしてますね。
まず、アロールブサール(たぶん)の、公共水場みたいなところに着く。井戸らしき深いところに水の溜まったコンクリートの大きな水槽があり、綱をつけたポリタンクがいくつか置いてある。道の脇すぐで、崖ぎわである。大きな木があって、木陰になっている。切り株や枯れ葉のあるあたりには、赤くて大きいアリがうろうろしている。マンディ用の小部屋が二つあり、そこで着替えをしろとのこと。(ちなみに、海に入るのは私一人です)
東ヌサトゥンガラ州アロール島の海 The Sea of Alor Island
http://www.youtube.com/watch?v=u00GOBDWVfE
http://www.digibook.net/d/7444ef57a19db87cabbbb1b5fb6a4420/?viewerMode=fullWindow
2008年11月15日、インドネシア文化宮で始まったバリ島舞踊写真展(2008年11~2009年2月)オープニングでバリ舞踊のPanyambrama(歓迎の踊り)とMargapati(森の王の踊り)を披露する芳野さん(撮影:GBI)。
(注)画像は特に表示がない場合、芳野未央さん撮影
★★★お知らせ★★★
芳野さんも参加するバリ舞踊公演が来る12月12日(日)、東京・神楽坂で行われます。是非ご覧になってください!
ガムラン・バテル+バリ舞踊 サンディア・ムルティ 東京公演
~ 夢一夜 五雲光芒 ~
2010年12月12日 開演14:30/18:00 (各回30分前開場)
場所:神楽坂セッションハウス
http://www.session-house.net/
前売:¥3000 当日:¥3500 (自由席)
チラシはホームページで見られます。
http://www.geocities.jp/nataraja_bali/
お問合せ・ご予約:gamelan_batel@yahoo.co.jp
http://www.digibook.net/d/5a55edff8018b2752293a9157f6a8524/?viewerMode=fullWindow
http://www.digibook.net/d/9685ad5b91d8923922d129854b604466/?viewerMode=fullWindow
【芳野未央プロフィール】
1988年4月 東京都立小平南高等学校入学。バリ舞踊を学びはじめる
1992年4月 東京農業大学農学部農学科入学
1996年3月 東京農業大学農学部農学科(昆虫学研究室)卒業
1996年9月 インドネシア政府国費留学生(ダルマシスワ)としてインドネシア芸術大学バリ島デンパサール校
STSI(現ISI)留学。バリ舞踊専攻
1998年3月 帰国
1998年5月 自主公演「ナタラジャ・バリ」第一回開催。以後、平成20年まで9回開催
2000年6月 ガムラングループ・スカールジュプンのバリ島アートフェスティバル公演に参加。
2005年3月 スマトラ沖地震被災地アチェ支援チャリティー「ゴトンロヨン」公演(都内3箇所)
2007年6月 創作ガンブー公演「竹取物語」演出・振付・出演
<講師歴>
1999年 4月~ 読売日本テレビ文化センター 錦糸町校
2005年12月~ 神宮外苑フィットネスクラブ サマディ
2010年 2月~ 東急セミナーBE 渋谷校
<バリでの師匠>
【 】内は習った踊り。
・イブ・チュニック:バトゥアン村、ジョゲピンギタンの踊り手。バリ最高齢の現役ダンサーだったが、2010年、85歳(推定)で天寿を全うする。トペン舞踊の名手まマデ・ジマットの母。【ジョゲピンギタン、バトゥアンのルジャン】
・イブ・カスニン:シンガラジャ・サワン村、タルナジャヤの踊り手。タルナジャヤ作者から直接教えを受けた最後の世代。数年前に亡くなる。【クビヤール・レゴン】
・グス・アジ・ブランシンガ:ブランシンガ村、クビヤール・ドゥドゥックの踊り手。70歳を超えてなおダンディな往年の大スター。【クビヤール・ドゥドゥック、バリス】
・グスティ・アユ・ラカ:プリアタン村、オレッグ・タムリリンガンの最初の踊り手。伝説的な踊り手マリオに直接指導を受けた最後の世代。【オレッグ・タムリリンガン】
・アナック・アグン・ラカ:プリアタン村、プリアタンスタイルの継承者。グヌンサリ、ティルタサリ、両舞踊楽団の創始者マンダラ翁の娘さん。【プリアタンスタイルのレゴン各種、ペンデット、プスパメカール】
・イブ・アユ・コルミ:スバリ村、ジョゲピンギタンの踊り手。スバリスタイルのジョゲピンギタン唯一の継承者。【ジョゲピンギタン】
・アナック・アグン・アノム:ウブド村、バリスの名手。スマララティ舞踊楽団のリーダーでもある。【バリス】
・イブ・アユ:ウブド村、オレッグとタルナジャヤの名手。アノムの妻であり、グスティ・アユ・ラカの姪。【タルナジャヤ、レゴン】
・イブ・スカール:バトゥアン村、イブ・チュニックの孫。バトゥアンのお家芸ガンブーをはじめ、男踊りもこなすマルチプレイヤー。【ガンブー、ウィラナタ、など】
・ニョマン・ブディアルト:バトゥアン村、イブ・チュニックの孫。マデ・ジマットの長男で最強のジャウック・ダンサー。【トペン・ニッコー、ジャウック】
・チョコルド・ルクミニ・プトゥリ:シンガパドゥ村、オレッグを得意とする。最近ではアートフェスティバルのコンペティションのための指導を数多く手がけ、多くを入賞に導いている。【プスパワルナ、チャンドラワシ、マヌックラワ、ユダパティ、ダヌールダラ、ウィラナタなど】
・イブ・アリニ:デンパサール市、レゴンの名手。【ドゥマンミリン】
・イブ・スシラ:デンパサール市、チョンドンの名手。【レゴン・ラッサム】
・イブ・パルティニ:デンパサール市、古典的男性舞踊の名手。【パンジ・スミラン】
・イブ・チャンドリ:シンガパドゥ村、歌謡劇アルジョのカリスマ。バリ歌謡といえば、第一にこの人の名前が挙がる。【アルジョ】
・バパ・スクルタ:パヤンガン村、影絵劇ワヤンの演者(ダラン)。トペン舞踊も踊る。【歌】
・イブ・アグン:タティアピ村、ジャンゲールの継承者。古いスタイルのジャンゲールの男女両方の歌と振り付けを教えられる。インドネシア空手シラットの使い手でもある。【ジャンゲール】
【関連ブログ】
芳野未央のアロール島紀行「ウォーレス線を越えろ!」Ke Pulau Alor, NTT~(No.15)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_17.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_18.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_19.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_20.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_21.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_22.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_23.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_24.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_25.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_26.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_27.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_28.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_29.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_30.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201012article_1.html
『LIKE・A・BALIJINウブドの達人展』スタート(Pameran Foto Bali)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_19.html
【芳野さんのWebsite】
ナタラジャ・バリ(Nataraja Bali)ホームページ
http://www.geocities.jp/nataraja_bali/
ナタラジャ・バリのバリ島の本
http://blog.livedoor.jp/balibooks/
【アロール島で潜る】
アロール島で潜る(12) Diving di Pulau Alor・ Pantar, NTT(12)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_27.html
アロール島で潜る(11) Diving di Pulau Alor・ Pantar, NTT(11)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_26.html
アロール島で潜る(10) Diving di Pulau Alo &Pantar, NTT(10)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_25.html
アロール島で潜る(9) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(9)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_24.html
アロール島で潜る(8) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(8)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_23.html
アロール島で潜る(6) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(6)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_20.html
アロール島で潜る(5) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(5)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_16.html
アロール島で潜る(4) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(4)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_14.html
アロール島で潜る(3) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(3)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_13.html
アロール島で潜る(2) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(2)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_12.html
アロール島で潜る(1) Diving di Pulau Alor & Pantar, NTT(1)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_11.html
【アロール島関連ブログ】
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/theme/c88587e2d0.html
【東ヌサトゥンガラ州関連ブログ】
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/theme/46f57db1d2.html
【アロール関連動画】
東ヌサトゥンガラ州アロール県のモコ博物館 Musium Moko, Alor, NTT
http://www.youtube.com/watch?v=3yuUq-cA_0U
NTT州アロール島のレゴレゴ・ダンスの今昔 Lego-Lego Dance of Alor Regency, NTT
http://www.youtube.com/watch?v=o5PvQtRPtKs
東ヌサトゥンガラ州フローレス&アロール島 Promotion Video Flores & Alor Islands
http://www.youtube.com/watch?v=M0EZqVYBr2Y
東ヌサトゥンガラ州プロモーションビデオ Promotion Video NTT Province Indonesia
http://www.youtube.com/watch?v=GuP7Qg1801g
【ササンドゥ関連ブログ】
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/theme/7a2ebd273c.html
【ササンドゥ関連動画】
バリ芸術祭でザカリアス・ンダオンさんがササンドゥ演奏(1) PKB ke-32(撮影:芳野未央)
http://www.youtube.com/watch?v=itE5oQ1MA9I
バリ芸術祭でザカリアス・ンダオンさんがササンドゥ演奏(2) PKB ke-32(撮影:芳野未央)
http://www.youtube.com/watch?v=rz6Wc__3DJ0
【ササンドゥ関連動画一覧】
http://www.youtube.com/results?search_query=%E3%82%B5%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%A5&aq=f
アロール県政府公式ホームページ(インドネシア語)
http://www.alorkab.go.id/
NTT(東ヌサトゥンガラ)州政府公式ホームページ(インドネシア語)
http://www.nttprov.go.id/
この記事へのコメント