芳野未央のアロール島紀行「ウォーレス線を越えろ!」(No.21) Ke Pulau Alor,NTT

画像


インドネシア文化宮(GBI)は、2002年~2008年の7年間にわたって、NTT(東ヌサトゥンガラ)州アロール県(Kab.Alor)との共催で、文化活動を軸とした島興しプロジェクトである大文化祭『エキスポ・アロール』を実施しました。“海のシャングリラ”と言っても過言ではない、美しい海底サンゴの園を有するアロール島とパンタール島、そしてブアヤ島、テルナテ島、プラ島、ケパ島などから成るアロール県。

GBIの呼びかけに応じて、これまで延べ数百名の日本人が現地を訪れた。そして、今夏、ナタラジャ・バリ(Nataraja Bali)を主宰するバリ舞踊家の芳野未央さんが「ウォーレス線を超える」との長年の夢実現を目指して、アロール島に旅立った。中学生の時、初めてバリ舞踊を見て感動。高校に入ると直ちに舞踊練習に着手。大学時代にはバリ島通い---と、芳野さんとバリ島との付き合いは筋金入り。

そして、卒業論文のテーマに「バリ島のコオロギ相撲」を課題に選び現地調査。バリ舞踊からコオロギまで。そういえば、あの『昆虫記』のジャン・アンリ・ファーブルも、昆虫研究の一方で、作曲家としての顔をも持っていた。ひょっとすると、芳野さん、舞踊家の裏面に博物学者の姿を隠しているのかもしれない。以下、シリーズでお届けする芳野未央の『ウォーレス線を越えろ!』紀行。


アロール島タクパラ村のレゴレゴダンス(撮影:GBI)。

画像


画像


画像


バリ島の東側には、ウォーレス線が通っている。ウォーレス線は、アルフレッド・ウォーレスが発見した生物の分布境界線だ。バリ島はアジア区。ロンボク島以東はオーストラリア区。ウォーレスは、マレー諸島(現インドネシア)の採集旅行を通して、ダーウィンと同時期に独自に進化論に到達した。進化論の島はガラパゴスだけじゃない。インドネシアだって進化論の島々なのだ。(ウォーレスの『マレー諸島』は、旅行記としてとても面白いので、ぜひご一読ください。)インドネシアに通い始めて二十年以上経つが、実は、バリ島より東側に行ったことがない。今回、とうとうウォーレス線を越えてきた。

2010年6月15日(火) アロール→クーパン→バリ

----クーパン----

クーパンに到着し、さて、バリ便までの時間をどうやってつぶそうか。ロビーで、バリ便の時間を確認したりしながら、もっさり突っ立っていたら、さっきアロールの空港で挨拶したお偉いさん二人が声をかけてくれる。
「これから、どこ行くんだ?」
「あー、バリに行くので、その飛行機を待ちます」
「バリ便、何時? けっこう時間あるじゃないか。一緒に昼飯食いに行こう。飯食ったらまた送ってきてあげる」
ありがたく厚意を受けることにする。

Old Alor(90年前のアロール島)


http://www.digibook.net/d/3344a59381d9983d3b3cab35ef680574/?viewerMode=fullWindow

車に乗って、市内に出る。海の見えるルマ・マカン・タンジュンというレストランに入る。アロールに住んでいた中華系の人がやっているとかで、知り合いらしい。イカン・バカール、他のところで食べた甘めのピーナツソースとはひと味違って、トマトサンバルを塗ってあってとてもおいしい。

カンクンとパパイヤの花を炒めた物。おいしいけどちょっとしょっぱい。牛肉を、揚げるように油たっぷりで焼いたもの。おいしい。この辺の名物らしい。ソト・ババッド、牛の内臓スープ。マイルドでおいしい。全部おいしいわ。

クーパンの浜辺(撮影:NTT州政府観光局)。

画像


そういえば、スープがなかなか来なかったので、偉いさんの一人がウエイトレスに催促すると、そのおばちゃんは厨房の近くにいた別のウエイトレスに「スープ注文してあるってさ!」と叫ぶ。あんたが自分で確認しに行けよっ。と、突っ込みたくなるが、こういう時にはつい「インドネシアは~」と思う。 ま、たいしたこっちゃないですがね。美味しい昼食をおごってもらい、また空港まで送ってもらう。おじさん達、どうもありがとうございました。

----バリへ----

チェックイン時に、IDチェック有り。ガルーダはするのかな。待合室は人がいっぱいだった。GBIお勧めの右側窓際の席に偶然座れた。小スンダ列島が見えます。点々と複雑な形の島が連なり、こんもりとした緑の上には、綿が引っかかったように雲が引っかかっている。島の上に雨が降るのだということが良く分かる。
 
画像

クーパン空港のゲートを出ると駐機場。クーパンはデンパサール、スラバヤ、ジャカルタなどとダイレクトフライトで結ばれている(撮影:GBI)バリ島へ向かう機上の人に。

画像


しかし、ガルーダ寒すぎ!!乗客みんな凍えてたぞ!とうとうバリに着いてしまった。宿まで乗ったタクシーの運ちゃんが、チップをくれと言うが却下。5:00前くらいに宿に到着。

画像

アグン山が見えてきた。バリ島へ戻ってきた(撮影:GBI)。

6:00に友人と食事をして、アロールのことをわーっと話して、そのままバトゥアンに行って8:00からの舞台を見る。これがイブ・チュニックの踊りを見る最後の機会になろうとは、この時思ってもみなかったが、本当に行っておいて良かった。飛行機乗って疲れたし、とあきらめなくて良かった。

画像


(イブ・チュニックは、ジョゲ・ピンギタンという古典舞踊の踊り手で、90歳近いこの時でも現役で踊れていたという凄い人。私の師匠であり、お祖母ちゃんのような人でした。約一ヶ月後の7月24日逝去)

バトゥアンから戻っても話し足りなくて、宿近くのカフェレストランでケーキを食べながらいっぱいしゃべる。12:00ころやっと帰って寝る。


アロール島タクパラ村のレゴレゴダンス特集(2002-2008) Lego-lego Dance Alor Island
http://www.youtube.com/watch?v=oAcxbwu1kRQ


アロールは、まとめるならば「風光明媚」。海と山の起伏のある景色。過ごしやすい島嶼気候。海に入ればサンゴの花園。山に上がれば見晴るかすジャングル。そして、思ったより、全然近い。バリからすぐと言ってもいい。必ずや、再訪したいと思います。

(注)画像は特に表示がない場合、芳野未央さん撮影


★★★お知らせ★★★

芳野さんも参加するバリ舞踊公演が来る12月12日(日)、東京・神楽坂で行われます。是非ご覧になってください!

ガムラン・バテル+バリ舞踊  サンディア・ムルティ 東京公演 
~ 夢一夜 五雲光芒 ~


2010年12月12日 開演14:30/18:00 (各回30分前開場)
場所:神楽坂セッションハウス
http://www.session-house.net/
前売:¥3000 当日:¥3500 (自由席)
チラシはホームページで見られます。
http://www.geocities.jp/nataraja_bali/
お問合せ・ご予約:gamelan_batel@yahoo.co.jp



【フォトアルバムで見るアロール島】



http://www.digibook.net/d/5044ef7b901a9035235eab21ef698564/?viewerMode=fullWindow




http://www.digibook.net/d/5a55edff8018b2752293a9157f6a8524/?viewerMode=fullWindow




http://www.digibook.net/d/9685ad5b91d8923922d129854b604466/?viewerMode=fullWindow




http://www.digibook.net/d/7444ef57a19db87cabbbb1b5fb6a4420/?viewerMode=fullWindow




http://www.digibook.net/d/219483ffa018b03d271cb9257b69c436/?viewerMode=fullWindow


【芳野未央プロフィール】

画像


1988年4月 東京都立小平南高等学校入学。バリ舞踊を学びはじめる      
1992年4月 東京農業大学農学部農学科入学
1996年3月 東京農業大学農学部農学科(昆虫学研究室)卒業
1996年9月 インドネシア政府国費留学生(ダルマシスワ)としてインドネシア芸術大学バリ島デンパサール校

STSI(現ISI)留学。バリ舞踊専攻
1998年3月 帰国
1998年5月 自主公演「ナタラジャ・バリ」第一回開催。以後、平成20年まで9回開催
2000年6月 ガムラングループ・スカールジュプンのバリ島アートフェスティバル公演に参加。
2005年3月 スマトラ沖地震被災地アチェ支援チャリティー「ゴトンロヨン」公演(都内3箇所)
2007年6月 創作ガンブー公演「竹取物語」演出・振付・出演

<講師歴>
1999年 4月~ 読売日本テレビ文化センター 錦糸町校
2005年12月~ 神宮外苑フィットネスクラブ サマディ
2010年 2月~ 東急セミナーBE 渋谷校

<バリでの師匠>
【 】内は習った踊り。

・イブ・チュニック:バトゥアン村、ジョゲピンギタンの踊り手。バリ最高齢の現役ダンサーだったが、2010年、85歳(推定)で天寿を全うする。トペン舞踊の名手まマデ・ジマットの母。【ジョゲピンギタン、バトゥアンのルジャン】
 
・イブ・カスニン:シンガラジャ・サワン村、タルナジャヤの踊り手。タルナジャヤ作者から直接教えを受けた最後の世代。数年前に亡くなる。【クビヤール・レゴン】

・グス・アジ・ブランシンガ:ブランシンガ村、クビヤール・ドゥドゥックの踊り手。70歳を超えてなおダンディな往年の大スター。【クビヤール・ドゥドゥック、バリス】

・グスティ・アユ・ラカ:プリアタン村、オレッグ・タムリリンガンの最初の踊り手。伝説的な踊り手マリオに直接指導を受けた最後の世代。【オレッグ・タムリリンガン】

・アナック・アグン・ラカ:プリアタン村、プリアタンスタイルの継承者。グヌンサリ、ティルタサリ、両舞踊楽団の創始者マンダラ翁の娘さん。【プリアタンスタイルのレゴン各種、ペンデット、プスパメカール】
 
・イブ・アユ・コルミ:スバリ村、ジョゲピンギタンの踊り手。スバリスタイルのジョゲピンギタン唯一の継承者。【ジョゲピンギタン】

・アナック・アグン・アノム:ウブド村、バリスの名手。スマララティ舞踊楽団のリーダーでもある。【バリス】
 
・イブ・アユ:ウブド村、オレッグとタルナジャヤの名手。アノムの妻であり、グスティ・アユ・ラカの姪。【タルナジャヤ、レゴン】

・イブ・スカール:バトゥアン村、イブ・チュニックの孫。バトゥアンのお家芸ガンブーをはじめ、男踊りもこなすマルチプレイヤー。【ガンブー、ウィラナタ、など】

・ニョマン・ブディアルト:バトゥアン村、イブ・チュニックの孫。マデ・ジマットの長男で最強のジャウック・ダンサー。【トペン・ニッコー、ジャウック】

・チョコルド・ルクミニ・プトゥリ:シンガパドゥ村、オレッグを得意とする。最近ではアートフェスティバルのコンペティションのための指導を数多く手がけ、多くを入賞に導いている。【プスパワルナ、チャンドラワシ、マヌックラワ、ユダパティ、ダヌールダラ、ウィラナタなど】

・イブ・アリニ:デンパサール市、レゴンの名手。【ドゥマンミリン】

・イブ・スシラ:デンパサール市、チョンドンの名手。【レゴン・ラッサム】

・イブ・パルティニ:デンパサール市、古典的男性舞踊の名手。【パンジ・スミラン】

・イブ・チャンドリ:シンガパドゥ村、歌謡劇アルジョのカリスマ。バリ歌謡といえば、第一にこの人の名前が挙がる。【アルジョ】
 
・バパ・スクルタ:パヤンガン村、影絵劇ワヤンの演者(ダラン)。トペン舞踊も踊る。【歌】
 
・イブ・アグン:タティアピ村、ジャンゲールの継承者。古いスタイルのジャンゲールの男女両方の歌と振り付けを教えられる。インドネシア空手シラットの使い手でもある。【ジャンゲール】

【関連ブログ】

芳野未央のアロール島紀行「ウォーレス線を越えろ!」Ke Pulau Alor, NTT~(No.20)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_17.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_18.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_19.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_20.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_21.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_22.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_23.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_24.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_25.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_26.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_27.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_28.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_29.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201011article_30.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201012article_1.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201012article_2.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201012article_3.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201012article_5.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201012article_6.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201012article_7.html

『LIKE・A・BALIJINウブドの達人展』スタート(Pameran Foto Bali)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_19.html

【芳野さんのWebsite】

ナタラジャ・バリ(Nataraja Bali)ホームページ
http://www.geocities.jp/nataraja_bali/

ナタラジャ・バリのバリ島の本
http://blog.livedoor.jp/balibooks/

【アロール島で潜る】

アロール島で潜る(12) Diving di Pulau Alor・ Pantar, NTT(12) ~(1)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_27.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_26.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_25.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_24.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_23.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_20.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_16.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_14.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_13.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_12.html
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200811article_11.html


【アロール島関連ブログ】
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/theme/c88587e2d0.html


【東ヌサトゥンガラ州関連ブログ】
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/theme/46f57db1d2.html


【アロール関連動画】


東ヌサトゥンガラ州アロール県の伝統舞踊レゴレゴ・ダンス(撮影:芳野未央)
http://www.youtube.com/watch?v=HVX0ILqRrQs


NTT州アロール島のレゴレゴ・ダンスの今昔 Lego-Lego Dance of Alor Regency, NTT
http://www.youtube.com/watch?v=o5PvQtRPtKs


東ヌサトゥンガラ州アロール島の海 The Sea of Alor Island
http://www.youtube.com/watch?v=u00GOBDWVfE


東ヌサトゥンガラ州アロール県のモコ博物館 Musium Moko, Alor, NTT
http://www.youtube.com/watch?v=3yuUq-cA_0U


アロール島のカラバヒから州都クーパンへのフライト Dari Kalabahi ke Kupang
http://www.youtube.com/watch?v=VWiqSFg3j14


東ヌサトゥンガラ州フローレス&アロール島 Promotion Video Flores & Alor Islands
http://www.youtube.com/watch?v=M0EZqVYBr2Y


東ヌサトゥンガラ州プロモーションビデオ Promotion Video NTT Province Indonesia
http://www.youtube.com/watch?v=GuP7Qg1801g

【ササンドゥ関連ブログ】
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/theme/7a2ebd273c.html

【ササンドゥ関連動画】


バリ芸術祭でザカリアス・ンダオンさんがササンドゥ演奏(1) PKB ke-32(撮影:芳野未央)
http://www.youtube.com/watch?v=itE5oQ1MA9I


バリ芸術祭でザカリアス・ンダオンさんがササンドゥ演奏(2) PKB ke-32(撮影:芳野未央)
http://www.youtube.com/watch?v=rz6Wc__3DJ0

【ササンドゥ関連動画一覧】
http://www.youtube.com/results?search_query=%E3%82%B5%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%A5&aq=f

アロール県政府公式ホームページ(インドネシア語)
http://www.alorkab.go.id/

NTT(東ヌサトゥンガラ)州政府公式ホームページ(インドネシア語)
http://www.nttprov.go.id/

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック