パプア州の民族に学ぶ自然との共生　Belajar dari Suku Bangsa Papua: インドネシア文化宮(GBI-Tokyo)

2011年04月13日

パプア州の民族に学ぶ自然との共生　Belajar dari Suku Bangsa Papua

今年の流行語大賞候補になるかもしれない「想定外」。東日本大震災が起きて以来、何度このフレーズを聞いたことでしょう。地震学者、津波学者、官房長官、東電、気象庁等々、いずれもが、今回の巨大津波の襲来に対して「想定外」の言葉で、まさに批判・非難をかわしている。

わずか100年あるいは数百年の記録を紐解き、“過去の歴史に学ぶ”とは。人類の歴史の長さと地球誕生以来の歴史とを比べても、それはもはや論外の差異がある。まさに天文学的な時空の差だ。それにも関わらず、科学者と称する人種は、古文書を含めて、彼らが知り得る、地球の歴史から見れば、ほんの数秒にも満たない時代体験を持って、天災との対峙を試みようとする。

かつてない規模の津波と言うが、それでは2万年前、あるいは1億年前の地球上では、彼らも“想定”できなかったような超巨大津波はなかったのであろうか。思い出してほしい。わずか6年と4ヵ月前に、スマトラ島北端の沖合でM9.1の大地震が発生し、まさに“想定外”の規模の巨大津波が起き、23万もの命を連れ去った。

あの時、Ｔ大学のＴ准教授などは、やはり今回と同様に「想定外の規模の津波」と表現し、地元アチェに対しては、「将来的には34メートルを超えるような津波に備えなければ」と地震学者としてのアドバイスを残した。しかし、彼は三陸海岸を含め日本で将来起きるかもしれない巨大津波には言及しなかった。アチェから何も学べなかった学者だ。

建築家や建設会社はよく言う。「このビルは関東大震災の二倍の規模の地震にも耐えられる」と。では、尋ねたい。「もしも関東大震災の三倍規模の地震が起きたらどうなるか」と。もちろん筆者は「天災」に必ず勝てと言っているのではない。大自然の猛威に立ち向かおうとしても、それが叶わぬケースがあることも理解している。それは、歴史が証明しているし、未来においてもそうであろう。しかし、人間は体験から学習することができる生命体でもある。過去に学ぶ意義がそこにある。

閑話休題。西部ニューギニアの中央高地と南部湿原地帯との境に暮らす、モミナ民族、チタック民族は、その昔から高さ7メートルほどの高さに家屋を作る。そればかりかコロワイ民族は、40メートルもの樹上に住家を作る。モミナやチッタクのエリアは、河川の上流部とはいえ、中央高地で大雨が降ると、すぐさま増水によって地面から3-5メートルもの洪水に襲われる。しかし、7メートルもの高さがあれば高鼾で眠ることができる。

大自然の営みに学習し、大自然の恵みで生かさせてもらっているとの思想がそこにはある。まさに自然との共生を実践している。自らが自然の小さな一部であることを正しく認識している。そこが、自然を“制御”できると考える科学者たちとは根本的に異なっている。核もそうであろう。この地球を幾度も破壊できるまでもの量の核兵器がこの世にはある。しかし、福島原発は、“制御”を超えてしまっている。

自然が牙をむく---と人は言う。自然は応える。「これも私の一つの素顔なんですが」と。本郷辺りで机に向かっているばかりの自称科学者には見えてこない素顔なのかもしれない。