西部ニューギニア・日本軍イドレ転進作戦　ワンマ氏の証言(4) Saksi Manokwari: インドネシア文化宮(GBI-Tokyo)

2011年06月16日

西部ニューギニア・日本軍イドレ転進作戦　ワンマ氏の証言(4) Saksi Manokwari

戦時中、第2軍司令部が置かれた西部ニューギニアのマノクワリ(Manokwari)。現在は西パプア州の州都。ここに暮らすバルナバス・ワンマ氏(87歳)はヌンホル島出身で、戦時下、日本軍の使役として農園・製材に携わっていた。氏の両親が所有していたとされる土地に、日本軍はレンダニ(Rendani)飛行場を建設した。
バルナバス・ワンマ氏(87歳)

西部ニューギニア・日本軍イドレ転進作戦　ワンマ氏の証言(4) Long March To Idore

西部ニューギニア・日本軍イドレ転進作戦　ワンマ氏の証言(3) Long March To Idore

西部ニューギニア・日本軍イドレ転進作戦　ワンマ氏の証言(2) Long March to Idore

西部ニューギニア・日本軍イドレ転進作戦　ワンマ氏の証言(1) Long March To Idore

西部ニューギニア・ビントゥニからバボへ(2) Dari Bintuni ke Babo, Teluk Bintuni, Papua Barat
http://youtu.be/_XftSogulas

西部ニューギニア・ビントゥニからバボへ Dari Bintuni ke Babo, Teluk Bintuni, Papua Barat

西部ニューギニア・旧日本軍バボ飛行場 Bandara Babo, Teluk Bintuni, Papua Barat
西部ニューギニア・日本軍イドレ転進作戦　エリー氏の証言(5) ～(1) Long March To Idore

67年前のこと。昭和19(1944)年7月、西部ニューギニアのマノクワリ(Manokwari)に司令部を置いた第2軍（豊嶋房太郎中将）は、迫る連合軍を前に、同地の兵力の内約2万を、ソロン(Sorong)、イドレ(Idore)へ転進させることを決めた。"転進"とは当時の名目。実際は、十分な糧食も持たない敗走だった。ベラウ(Berau)地峡のイドレ村へ向かったおよそ1万2千（注：1万5千との説もある）の将兵。この中には、インドネシア人兵補、台湾人軍属、朝鮮半島出身者、インド人などもいた。

制空権・制海権を完璧に失ったニューギニア島の日本軍。ホーランジア（現パプア州の州都ジャヤプラ）、ワクデ島、サルミそしてビアク島、ヌンホル島へ飛び石上陸で日本軍を玉砕に追い込む連合軍。ヌンホル島への敵軍上陸を機に、マノクワリ(Manokwari)に司令部を置く第2軍は、在マノクワリの兵力の分散を図った。いわゆる口減らし。

第2軍参謀長の藤塚止戈夫（ふじつかしかお）中将発案とされる、このイドレ転進作戦は、結果的に"飢餓地獄"への無意味・無慈悲な敗退行軍となった。一週間で到達できるとされた距離。しかし、実際には2～5ヶ月も要した。木の根を齧り、泥水を飲んだ将兵。容赦なく襲う悪性マラリアや熱帯性の下痢。戦わずして、1万数千もの将兵が草生す屍と化した。

イドレ近辺まで到達できた将兵らも、第2軍司令部の命令で、直ちにイドレ村南西一帯の湿地帯への移動を余儀なくされた。マノクワリの口減らしに次ぐ、イドレの口減らしだった。しかし、彼の地ではサゴ椰子が繁茂しているとの情報は嘘だった。飢餓で、そして連合軍から武器を与えられた地元民の襲撃を受け、ナラマサ(Naramasa)地区やサルベ(Sarbe・かつてサレベ=Sarebeとも呼称）地区に展開したほとんどの将兵らが死亡。

かつて、マノクワリ郊外までしかなかった自動車道路は、今は転進作戦の中間地点（補給所）とされたモミ村ばかりか、転進作戦の最終目的地であるイドレへ向って建設されつつある。2011年3月初旬時点では、ベラウ地峡までは到達していないが、モミ村を過ぎた先から、南西方向へ道は伸び、ビントゥニ湾県(Kabupaten Teluk Bintuni)の県都ビントゥニに至る道路が完成している。

現在の西パプア州の州都マノクワリ(Manokwari)。日本軍の第2軍司令部が最初に置かれた場所である。ここに暮らす、ヌンホル島出身のバルナバス・ワンマ(Barnabas Wanma)氏(87歳)は、戦時中、日本軍の命令下、農園や製材所で働いた経験を持つ。さらに、同氏の両親が所有していた土地に、日本軍はレンダニ(Rendani)飛行場を建設した。同氏は言う。『飛行場となった場所が私の所有物であったことを、日本政府はきちんと確認してほしい』と。

マノクワリからビントゥニ湾（ベラウ湾）のイドレ村へ至る“地獄の転進作戦”。ビントゥニ湾一帯には、今でも1万を超える旧日本軍将兵が、祖国に帰還することなく、終戦も知らずに瞑っている。