Sail Morotai 2012 ハルマヘラ島とモロタイ島の2012年

戦時中、ニューギニアやアンボン、スンダ海域など、いわゆる濠北方面への兵員・物資の補給中継基地だった。さらに艦隊基地設定の構想さえあった。昭和19(1944)年5月末の連合軍によるビアク島(Pulau Biak)上陸。戦史上まれにみる激戦。日本軍はビアク戦を支援するため渾作戦を計画。同年6月、第三次渾作戦に参加する予定の戦艦大和や武蔵は、ハルマヘラ島の南西部に浮かぶバチャン島(Pulau Batjan)沖の泊地に到着した。
しかし、連合軍によるマリアナ攻略作戦(注:サイパン上陸は6月15日)の開始に伴い、宇垣纏中将指揮下のバチャン集結部隊は、マリアナを目指して北進。大和や武蔵を始め、重巡洋艦の妙高、羽黒などはバチャンを離れ、モルッカ海峡を経てマリアナ諸島へ向かった。
モロタイ島は、主戦場が西部ニューギニアからフィリピン戦線に移る過程で、連合軍が航空作戦の拠点として制圧した島だ。県都ダルバ(Daruba)の沖合にあるズムズム島(Pulau Zum Zum)には、今、連合軍南西太平洋方面(SWPA)の指揮官だったダグラス・マッカーサー将軍の像が建つ。
68年前の1944年9月15日、連合軍はモロタイ島最南端のギラ岬付け根付近のピトゥ(Pitu)に上陸。直ちに大飛行場を建設した。その飛行場は、今もモロタイ島の空の玄関口「ピトゥ空港」として現役だ。
そして、このピトゥ空港に来る9月15日、スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領がやってくる。「Sail Morotai 2012」の記念式典に参加するためだ。過去約10年間にわたって毎年実施されている『Sail Indonesia(2012年は6~9月実施)』。主にオーストラリア人を中心とするヨット愛好家が、インドネシア海域を縦横断する“観光ヨットレース”。
今年は、初の試みとして「Sail Morotai」のルート名称が正式に採用された。インドネシア政府は、東部インドネシアの発展の一つの起爆剤として、セイル・モロタイに期待している。海洋資源の開発、そして海洋観光分野に対する内外からの投資に寄せる皮算用。豪州、マレーシアそしてフィリピンなどからおよそ120隻のヨットが集まるとのことだ。
中央政府そして地元政府は、この催しに海外からおよそ5,000名の観光客が集まるものと強気の姿勢。かつてこの地で戦った経験があるアメリカ人や豪州人、日本人などを想定しているらしい。だが、当時20歳としても現在は87歳。孫の世代の参加はあり得るだろうが、戦勝国ベテランがどれほど集まるものか。いわんやモロタイ島突入戦でおよそ1,700名の将兵を失った日本軍。日本及び台湾からの参加者の推定値は報道されていない。
モロタイ島からは、1974年12月、台湾出身の高砂義勇隊の中村輝夫さん(本名、スニオン、李光輝)が“生きていた日本兵”として台湾へ帰国した。
『其の時部隊長(注:川島威伸少佐指揮下の第二遊撃隊)は、此の部隊の兵は蛇やトカゲを食うて生存出来るように、先祖代々、台湾の山地で鍛えられて居るから、心配はいりませんと、心強く言われて、成る程之でこそジャングル地帯のゲリラ部隊であると、又々感心させられた。当時まだ、米軍が上陸して居なかったので、其の数日後に川島部隊はモロタイに上陸させられた』(『壕北を征く』の「第三十二師団の作戦」元第32師団長石井嘉穂中将著)。
「Sail Morotai 2012」---67年の時を経て、レジャーヨットが集まり、“太平洋地域経済の新時代に向けて(Mejuju Era Baru Ekonomi Regional Pasifik:Step to the New Era of Pacific Regional Economy)”をテーマに、インドネシア東部地域の発展を期する。戦艦からヨットへ。戦争から観光へ。マッカーサー将軍からユドヨノ大統領へ。時代は巡る。





【参考ブログ】
Sail Morotai
http://www.sailmorotai2012.com/
Sail Indonesia
http://www.sailindonesia.net
東部インドネシアの旧日本軍航空基地(83) Bandara Dai Nippon(83)モロタイ島 (Morotai)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200902article_26.html
東部インドネシアの旧日本軍航空基地(82) Bandara Dai Nippon(82)モロタイ島(Morotai)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200902article_25.html
東部インドネシアの旧日本軍航空基地(81) Bandara Dai Nippon(81)ハルマラ島(Halmahera)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200902article_24.html
東部インドネシアの旧日本軍航空基地(80) Bandara Dai Nippon(80)ハルマヘラ島(Halmahera)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200902article_23.html
東部インドネシアの旧日本軍航空基地(79) Bandara Dai Nippon(79)ハルマヘラ島(Halmahera)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200902article_22.html
東部インドネシアの旧日本軍航空基地(78) Bandara Dai Nippon(78)ハルマヘラ島(Halmahera)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200902article_21.html
東部インドネシアの旧日本軍航空基地(77) Bandara Dai Nippon(77)ハルマヘラ島(Halmahera)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200902article_20.html
東部インドネシアの旧日本軍航空基地(76) Bandara Dai Nippon(76)ハルマヘラ島(Halmahera)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200902article_19.html
この記事へのコメント