再録『ライラのイリアンジャヤだより』 Surat dari Irja ジャヤプラの通学事情

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ジャヤプラの通学事情
『イリアンジャヤでは、大学への通学は何に乗っていくの?』--友人からよく質問される。自分の車なんて持っていないので、一般交通手段に頼るしかないのだが、ここジャヤプラではその種類は極めて少ない。
日本のような路線バスなんてまだないし、ましてや電車など、この土地の起伏の激しい地形を考えると、今後何世紀たったとしても、それが現れることはないように思われる。首都ジャカルタのようなメータータクシーもない。
ここでの足はスバリ、スズキの小型ワゴン車を使った乗り合いタクシーである。本来は運転手を含め7人乗りだが、ここでの「定員」は十人。二人用のイスに3人、3人掛けのところに4人、ぎゅうぎゅう詰めになり座る。お寿司のシャリの気持ちがよく分かる。
オジェック(オートバイのタクシー)

普通に座っていたのではそんな人数入りきれるわけがない。しかし、これにはコツがある。みんな心得たもので、おしりを前後交互にずらし入り込む。誰もきついなどと文句をいったりはしない。

このタクシーにはたいてい、ドア付近の足かけに、専用小型いすを備えつけた、コンダクターと呼ばれる行き先を叫び、客を探し、お金のやりとりをする役目の人が座っている。

これらの車は、なぜかどれも目立ちたがりで派手な彩色がされていたり、大きなランプがデイスコのようにチカチカ点滅している。車の前後には必ずそのタクシーの”名前”が書かれている。それはその車の持ち主の趣味で決めていいものらしく、人の名前からはじまり英語を使ったものなど多種多様である。驚いたことに、なんと日本語のカタカナでそれが書かれている車が一台あった。名は”ブルドーザー”であり、左右の窓には安全第一などと書かれた大きなシールが貼ってある。
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ジャヤプラの乗り合いタクシー

ジャヤプラのタクシーの特徴であるが、外装と同様、車内が過剰なほど装飾してある。前後のガラスには直射日光よけの反射シートが貼られており、正面中央には吸盤でつくマスコットがぶらさがり、運転席前には芳香剤、カレンダー、ティッシュの箱、時計、カセット類が前が見えないのではないかと不安になるほど並べられている。いすの背もたれには芸能人のポスター。そして極めつけは話しもできないほどの大音量のミュージツク。最初はとまどい、信じられなかったが慣れてみると、これも結構楽しい。

さて、このタクシーの乗り方である。一応それぞれ交通の要所に、タクシー・ターミナルがあり、行き先別に車が並んでいる。でもいちいちターミナルへ行く人などめったにいない。たいてい流しの車をひろう。車の正面には、その車のルートが書かれているが、あまりあてにならないので、コンダクターがさけんでいるのを聞き、すばやく人差し指を前に出すポーズで車を止める。もしも自分の行きたい方向への車じゃない場合は、車は止まるが完璧に無視すればOK。自分の目的地を通る車であったら乗り込む。そして下りたいところで、下りますというと車を止めてくれるので、下りるときにコンダクターに料金を払う。ドアーからドアーだ。
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タクシー・ターミナル

料金はそれぞれの区間ごとに一定のものがあるが、あまりにも距離が短かったりするとまけてくれたり、あいまいである。学生割引などというのまであり、大学生にも通用するが、学生と偽って安く乗ろうとする一般人がいるため、制服を着た者でないと疑われることがある。

ここではあるきまった額を毎月タクシー協会に納め、残りが自分の利益となるため、学生の割り引いたのなんかより一般人を乗せた方が得だといい、学生たちを乗せたがらない運転手たちが抗議されるという事件も起きた。

私の家からアビプラという町にある大学までは、一回の乗り換えがあり所用時間はおよそ三十分。料金は合わせて1200ルピア。朝五時頃から夜九時頃までたいていのところを走っているのでこの時間帯に出かけるのならば不自由しない。しかし夜九時をすぎると、もうこのタクシーはなくなり、残る交通手段は、ホテルの前に待機しているホテル・タクシーをチャーターするか、タクシーのオートバイ版(オジェック)を探すか、あとは徒歩のみ。夜九時を過ぎたら、ジャヤプラは眠りの準備に入る。
1998年9月25日


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