再録【画家ハルディの日本日記(10)】 Pelukis Hardi di Negeri Sakura

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1999/4/24
宜野湾市上原358番地。米軍普天間基地を取り囲む金網フェンスに接する場所に、小さいながらも巨大・偉大な絵画を収蔵する美術館がある。佐喜眞美術館(SAKIMA ART MUSEUM)だ。5年前の1994年11月23日に、佐喜眞道夫(Michio Sakima)氏が開館した。
丸木位里・俊作『沖縄戦の図』の前で

『沖縄の植物たちは、台風のただ中に枝葉をひきちぎられても、しなやかに揺れながら“根太く”成長していきます。しかし、鉄の暴風(沖縄戦)以降の変化は、あまりにも急激であります。私は、なんとしても、心が落ちついて静かに「もの想う場」をつくりたいと考えておりました。(中略)1983年、丸木位里(Iri Maruki)さん、俊(Toshi)さんとの出会いは、運命的な出来事と成りました。御夫妻は「沖縄戦の図」を、沖縄に置きたいと願っておられました。私たちの願いが、一つになって、米軍普天間基地の一部が、1992年に返還され、1994年11月23日美術館を開館することが、出来ました』-----館長の佐喜眞道夫氏が、「もの想う空間へ」と題して、同美術館の案内パンフにそのように書いている。丸木位里さん、俊さん御夫妻は、“ヒロシマを見た画家”として、1947年から36年間で『原爆の図』(15部)を描いている。しかし、アジア・太平洋戦争の真実を描くためには、どうしても沖縄戦と取り組まねばと考え、1982年から『沖縄戦の図』(14部)を描いた。

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丸木位里・俊作『沖縄戦の図』部分(佐喜眞美術館収蔵:佐喜眞道夫館長のご厚意で掲載を特別に許していただきました)

『沖縄戦の図』はすべて佐喜眞美術館が収蔵しており、ハルディ氏が訪れた際には、一番奥の第3室に4作品が展示されていた。正面に掲げられた『沖縄戦の図』は400X850の超大作。阿鼻叫喚の地獄図絵といった表現では足りない。愚かな戦争を、庶民が血と死で語ろうとしている姿。ハルディの足は止まり、棒のように立ちつくした。『沖縄へやって来て、この絵に出会い、最高のショック、そして感動を得た。この絵に出会うために、沖縄に来たのかもしれない』とハルディ氏。巨大な絵画の左下に、次のような文字が書き込まれている。

沖縄戦の図

恥かしめを受ける前に死ね

手りゅうだんを下さい

鎌で鍬でカミソリでやれ

親は子を夫は妻を

若ものはとしよりを

エメラルドの海は紅に

集団自決とは

手を下さない虐殺である

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佐喜眞美術館の前にて(左より佐喜眞道夫館長、ハルディ氏、GB代表)

【佐喜眞美術館(SAKIMA ART MUSEUM)】

住所:〒901-22沖縄県宜野湾市上原358

電話:098-893-5737 FAX:098-893-6948

開館時間:9:30~17:00 休館日:火曜日・年末年始

入館料:大人600円、中高400円、小人300円

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KADENA『嘉手納基地』(水彩)

那覇から高速道路の沖縄自動車道を真北へ。沖縄南のICを降り、沖縄市(旧コザ市)へ。極東最大の米空軍基地である嘉手納基地に隣接する沖縄市。ガイドブックには「アメリカンテイストの沖縄市」とあるが、ハルディ氏の目には「アメリカンコロニアルの沖縄市」と映ったそうだ。

嘉手納基地を見渡すことができる小高い土手、通称「サンパウロの丘」に立ったハルディ。前方には巨大な滑走路が広がり、軍用機の発着こそ眺めることはできなかったが、基地の島沖縄を象徴する光景に、ハルディは気難しい表情に。

赤茶けた地面に直に腰をおろし、スケッチを始めた。一枚目。格納庫や滑走路を描いたところで、おもむろに画用紙を破り、丸めて捨ててしまった。二枚目に挑戦。一本の松の木と格納庫群。三分の一も描かないところで、再び破ってポイ。表情が一段と険しくなる。沈黙。三枚目を描き始めた。二枚目同様に、格納庫群を描き終えると『ああ、だめだ。描けない。止める。もういい』と、片付けを始めてしまった。『この光景は、僕の対象ではない。KADENAを描けるほどKADENAのことを理解していない。止めた方がいい』

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KADENA『嘉手納基地』(水彩)

作品『SAKURA(2)』を仕上げたハルディ氏は、日曜日(25日)の午後、昼食もとらずに『もう一枚描きたい』と言いキャンバスに向かった。『嘉手納基地を前にした時は、なんどスケッチしても、創作意欲が沸いてこなかった。がしかし、今こうして東京に戻ると、あれは描いておかなくてはと思うようになってきた』と。

名護市の名桜大学でインドネシア語を教える安田和彦氏(GBIホ―ムページで「安田和彦の沖縄マタハリ物語」を連載中)が運転する乗用車で、沖縄本島南部の沖縄戦跡国定公園にある「ひめゆりの塔」を訪れた。先の大戦で犠牲となった女子学生210名、教職員7名の計217名が眠っている。ハイビスカスを献花したハルディ氏は、イスラム式の作法で黙祷を捧げた。『インドネシアにも多くの戦跡があるが、ここのようにいつでもいつでも訪問者が絶えないような場所は少ない。若い人々が多い点も感動した』とハルディ氏。

嘉手納基地をサンパウロの丘から見学したハルディ氏は、米軍普天間基地のある宜野湾市を訪れ、最近東京から引っ越してきたばかりの小島広太郎さんの家を訪問した。小島氏は、かつてジャカルタでハルディ氏の展示会を訪れたことがあり、朝日新聞4月17日付け夕刊の『地球の肖像』欄に掲載されたハルディ氏の記事を読んで、ハルディ氏の沖縄訪問を気にかけていた。

小島さんは、奥様の江上幹幸(ともこ)さんと何度もインドネシアへ出かけ、特にインドネシア東部のレンバタ島の捕鯨について調査・研究・取材を続けている。去る一月末には、中公新書『クジラと生きる』(¥920)を共著で発売している。青山学院大学で長く非常勤講師を務めていた、民族考古学者の江上さんは、この4月より沖縄国際大学文学部に助教授として招かれ、宜野湾市に暮らしている。

『お風呂場から東シナ海が眺められるんですよ』と、「せせらぎ」という名の、涼しげな名前のマンション4階の部屋をたいそう気に入っている小島さん。あいにく江上さんは講義中。小島氏が入れてくれたインドネシアコーヒーと紅茶がおいしかった。


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【参考動画】


インドネシア人画家ハルディ氏東京で個展(1999年4月)Indonesian Painter Hardi
http://youtu.be/k_p3FDr02Po


インドネシア人画家ハルディ氏東京で個展2(99年4月)Indonesian Painter Hardi
http://youtu.be/ai84C_BdqxM


インドネシア人画家ハルディ氏東京で個展3(99年4月)Indonesian Painter Hardi
http://youtu.be/RqXnE6Szcz8


インドネシア人画家ハルディ氏東京で個展4(99年4月)Indonesian Painter Hardi
http://youtu.be/GbEHJeJPU5o


インドネシア人画家ハルディ氏東京で個展5(99年4月)Indonesian Painter Hardi
http://youtu.be/EewbR7wFwlM

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作品『2001年インドネシア共和国大統領スハルディ(PRESIDEN RI.TH.2001 SUHARDI)』
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作品『Tawaf』 80 X 60cm(油絵)1998
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作品『Two Dancers』 60 X 70cm(アクリル画) 1998

【参考ブログ】

再録 【画家ハルディの日本日記(9)】 Pelukis Hardi di Negeri Sakura
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201308article_4.html

再録 【画家ハルディの日本日記(8)】 Pelukis Hardi di Negeri Sakura
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201308article_3.html

再録 【画家ハルディの日本日記(7)】 Pelukis Hardi di Negeri Sakura
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201308article_2.html

再録 【画家ハルディの日本日記(6)】 Pelukis Hardi di Negeri Sakura
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201308article_1.html

再録 【画家ハルディの日本日記(5)】 Pelukis Hardi di Negeri Sakura
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201307article_31.html

再録 【画家ハルディの日本日記(4)】 Pelukis Hardi di Negeri Sakura
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201307article_30.html

再録 【画家ハルディの日本日記(3)】 Pelukis Hardi di Negeri Sakura
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201307article_29.html

再録 【画家ハルディの日本日記(2)】 Pelukis Hardi di Negeri Sakura
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201307article_28.html

再録 【画家ハルディの日本日記(1)】 Pelukis Hardi di Negeri Sakura
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201307article_27.html

テーマ「インドネシアの絵画」のブログ記事
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/theme/e48ffb0122.html

再録『GBIニュース』1999.9.3【モデル・パート4】インドネシアのミケランジェロはヌード画一筋
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201209article_28.html

画家ハルディ氏らが『石油の世界絵画展』 Dunia Perminyakan Indonesia
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201205article_10.html

再録『GBIニュース』1999.7.4 画家ハルディ氏が初公開するウィナのヌード画
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201202article_11.html

再録『GBIニュース』1999.6.23 画家ハルディのモデルがアルマーニのモデルへと華麗な変身
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201201article_21.html

再録『GBIニュース』1998.11.26 画家ハルディさんのモデル:デイス・エル・アンワール
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201109article_25.html

再録『GBIニュース』1998.11.20#2 画家ハルディ氏が初の画集を自費出版
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201109article_16.html

再録『GBIニュース』1998.11.11#2 画家ハルディ氏個展 Pelukis Hardi
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201109article_2.html

再録『GBIニュース』1998.11.10 画家ハルディ氏14回目の個展Pelukis Hardi
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201108article_28.html

再録『GBIニュース』1998.9.5#2画家ハルディWWCR dgn Pelukis Hardi
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201107article_31.html

再録『GBIニュース』1998.9.4 WWCR dgn Pelukis Hardi
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201107article_29.html

インドネシア人画家ハルディ氏東京個展の動画(5) Pelukis Hardi di Tokyo 99
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200907article_39.html

インドネシア人画家ハルディ氏東京個展の動画(4) Pelukis Hardi di Tokyo 99
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200907article_37.html

画家ハルディ氏と見たサッカーをする与那国島の子犬 Anjing main bola
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200907article_36.html

インドネシア人画家ハルディ氏東京個展の動画(3) Pelukis Hardi di Tokyo 99
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200907article_35.html

インドネシア人画家ハルディ氏東京個展の動画(2) Pelukis Hardi di Tokyo 99
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200907article_33.html

インドネシア人画家ハルディ氏東京個展の動画 Pelukis Hardi di Tokyo 1999
https://gbitokyo.seesaa.net/article/200907article_32.html

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