“自殺禁止看板”NTT州都クパンのリリバ橋　Dilarang Bunuh Diri, Kupang: インドネシア文化宮(GBI-Tokyo)

2015年06月26日

“自殺禁止看板”NTT州都クパンのリリバ橋　Dilarang Bunuh Diri, Kupang

インドネシア共和国は、日本と比較すると、自殺率の優等生だ。WHO（世界保健機関）の2012年統計で見ると、170ヵ国の、人口10万人あたりの自殺者数は、日本が18.5人で世界第18位。そしてインドネシアは、4.3人で第136位。ちなみに、1位は、南アメリカ大陸北東部のガイアナ共和国の44.2人。2位は、推計統計だが、北朝鮮の38.5人。以下、韓国28.9人、スリランカ28.8人と続く。“腹切り”文化の歴史から自殺が多いと思われがちな日本だが、10万人あたりの自殺率は18.5人と、世界平均のおよそ1.6倍だ。

とは言え、日本は、自殺者総数では、同じくWHOの2012年統計で見ると、“堂々の”世界第5位。一位はインドの258,075人、次いで中国の120,730人、アメリカ43,361人、ロシアの31,997人。ちなみに韓国は第6位の17,908人。

日本の“自殺の名所”と言えば、青木ヶ原樹海（山梨県）、東尋坊（福井県）、華厳の滝（栃木県）、足摺岬（高知県）、そして東京の新小岩駅等が知られている。それらの地域では、「いのちの電話」や「声掛け運動」などを通じて、自殺防止策が行われていると聞く。

しかし、インドネシアは違う。少なくとも、NTT（東ヌサトゥンガラ）州の州都クパン(Kupang)では。
『ここでの自殺禁止!！そして他の場所でも！(Dilarang bunuh diri di tempat ini & di tempat lain)』---去る6月19日、突然、そうマジックで書かれた板の看板が、クパン市内のリリバ川に架かるリリバ橋(Jembatan Liliba)に出現した。誰が設置したのかはいまだに不明だ。しかし、付近住民の賛同と支持を得ている、と地元紙は伝えている。

1994年に完成したリリバ橋。幅9m、長さは135m。しかし、谷底までの高さはおよそ200m。乾季の川面は細く、河原には緑の大木が茂っている。確かに、自殺願望者にとっては、市中心部というアクセス、そして確実性の視点から絶好の地かもしれない。

最新情報によれば、今年は去る5月7日、SHさん（42歳・男性）の腐乱遺体が発見された。そして昨年は二遺体。付近の住民によれば、リリバ橋では毎年自殺が報告されているそうだ。そのため、『自殺禁止!』看板の出現は“遅すぎる”とのコメントも。

さて、この看板、これから効果を発揮するのか？それとも逆に、“自殺の名所”として、次なる自殺願望者を引き寄せるのか。それにしても、命を絶つ前に、最後の相談を呼び掛ける日本の「いのちの電話」とは、対処法が著しく異なる。要は“自殺禁止！”と命令口調なのである。

そう言えば、このリリバ橋の川底付近には、かつて日本軍が掘った横穴形式のゴア（壕）が今も残っている。しかしながら、地元住民も市当局も、戦後一度として内部に入ったことはないという。どれぐらい奥が深いのか、中はどのような構造になっているのか？すべては謎のままだ。