西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(55): インドネシア文化宮(GBI-Tokyo)

2017年03月15日

西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(55)

小泉元少尉は、『雪第三十六師団戦誌』（関東地区雪部隊慰霊会編さん委員会編集発行・昭和63年4月30日）に収められた『第二軍情報班について』の中で、第二軍隷下の大規模な情報班編成に触れ、神機関、虎機関、自らが属した鰐機関、龍機関、梅機関等に関して詳述している。その中から、小泉元少尉が日高岩男少佐指揮下で参加したロンベバイ湖のヤピナ島攻略作戦について以下抜粋したい。

「この湖にはマンベラモ河東岸より流入してやや下流のマンベラモ河へ再び流出する水路がある。また東南一帯の雨量は自然にこの湖に流入し、湖畔はマングローブ、葦、深い原始林に蔽われて、湿地帯を形成している。出口に当たる水路の湾曲部には、早くも山上健一少尉を長とする、軽機関銃を備えた警備隊が派遣され、マンベラモ河を遡行する敵舟艇に備えて配置についた」

「一方我々工作隊は四隻のカヌーをマンベラモ河よりひそかに湖の西南に移動を完了し、偵察準備に万全を期した。七月二十四日、日高少佐陣頭指揮のもと、ロムベバイ湖東北岸に接したヤピナ島を発見、米軍水挺基地の存在を確認した。更に数度にわたる綿密な偵察活動が昼夜を分かたずに行われたが、七月三十日夜半、四隻のカヌーに分乗した日高少佐以下一六名の切込隊が、この飛行水艇基地に奇襲上陸を敢行、激しい戦闘の末、敵は基地を撤退したが、我が方の損失も大きく、鰐機関長日高岩男少佐は集中砲火を浴びて、壮烈な戦死、小泉少尉行方不明、杉沢軍曹と村瀬兵長は戦死、七月三十一日夕刻に徳野曹長は自らも重傷の身を残る一二名をまとめて基地に引きあげた。『鰐工作隊は七月三十一日払暁ロムベバイ湖ヤピナ島を奇襲攻撃し、該敵の拠点を覆滅せり、我が方の戦死日高少佐以下四名』新穂少佐は電文を起草して、兵団司令部に打電した」

第36師団長・田上八郎中将。『第三六師団　歩兵第二百二十三聯隊史（雪第三五二四部隊）』から引用。

「敵を撤退させ、戦闘には勝利を得た。しかし、機関長日高少佐以下尊い犠牲者を出した鰐工作隊は暗い表情におおわれてしまった。九月中旬に兵団から派遣された大型発動機船に新穂少佐以下五十数名の隊員が乗船、サルミに向かった。途中マンベラモ河口を出た所で、二機のグラマン戦闘機の襲撃に遭い、舟艇は炎上したが、海岸から密林を抜けて、三〇キロあまり、敵の目を逃れてオライ河上流から迂回して師団司令部のある光ヶ丘に到着して、神、鰐工作隊はマンベラモ派遣隊の任務を終えた」

西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(1)

https://youtu.be/qzaMsL7TRpg

昭和19(1944)年11月25日、モロタイ島で日本軍機の攻撃に遭って破壊された米軍飛行艇PBYのOA-10A型機のシリアル番号「44-33875」機。機種に75の番号が。整備兵の表情に笑顔の余裕がある。撮影は、11月25日の数日前と思われる。まさに、この機が、同年7月31日、日高岩男少佐率いる鰐工作隊に夜襲をくらった、ロンベバイ湖ヤピナ島の連合軍水艇基地の隊員救助に向かった。