“極秘”地図に見る西部ニューギニア戦線 戦争と地図(3)

「大本営がニューギニアの占領に関して最初に部署したのは昭和17年2月初めである。すなわち『東部「ニューギニヤ」ノ要地ヲ「ソロモン」諸島要地ト共ニ攻略シ濠州本土ト同方面トノ連絡ヲ遮断シ濠州東部北方海域ヲ制圧スヘシ」という趣旨がラバウル方面占領の陸海軍部隊に命令されたのである」(戦史叢書 西部ニューギニア方面陸軍航空作戦・防衛庁防衛研修所戦史室著・朝雲新聞社・昭和44年1月20日発行)。
西部ニューギニア方面については、昭和17年3月5日、大本営海軍部が、連合艦隊に対して、ジャワ攻略作戦終了後、適宜、蘭領ニューギニア方面の要地を占領するように命令を下している。そして、海軍陸戦隊は、同年3月末に行動を起こし、西部ニューギニアの要地を4月中旬にわたって占領している。また陸軍側の西部ニューギニアに対する兵力投入は、当時、全然問題にはならなかった(同書)。
さて、当時、日本軍はどのような西部ニューギニア地図を有していたのだろうか? ホランジア(現ジャヤプラ)からサルミに至る“転進作戦”や、マノクワリからイドレに至る“転進作戦”。いずれも万単位の餓死・戦病死をもたらしたが、その際使用された地図は、ほぼオランダがかつて作成した地図の焼き直しだった。しかもその縮尺は多くが、1/100万。とても“兵要地誌”の一助と呼べる代物ではなかった。大きな河川は記されてはいたものの、大河川の間に横たわる小中河川は全く描かれていなかった。いわんや村々の位置や山岳の状況などは、とても転進(敗走)行に使えるものではなかった。
インドネシア文化宮(GBI)では、戦史・戦誌の収集と並行して、当時の地図の収集も行っている。今やGoogle MapやGoogle Earthで、地球上の細部まで知ることができる時代を迎えている。GPSを使えば、自分の位置をほぼ正確に特定できる。戦時中の地図は、少なくない大学図書館が所蔵しているが、それを入手することは容易ではない。ネット上に紹介されてはいても、それをダウンロードすることは困難だ。そこで、国立国会図書館が所蔵する地図類に注目してみた。
今回紹介する西部ニューギニアの地図は、『蘭領ニューギニア明細圖』と題する、陸軍参謀本部が昭和17年2月1日付で印刷したものだ。サイズは63 X 84cm。主要地の解説文が書き込まれている。主要港や飛行場、無線電信所の位置が記され、邦人企業・個人が活動する様子も記載してある。色刷りの地図は、まるで宝島地図にも似た、見るものをワクワクさせる魔力を秘めている。□の中に秘の文字。しかしながら、このレベルの地図で、作戦計画を立てざるを得なかった当時の将官ら。地図から見る戦争は、ニューギニア戦線の実相を炙り出す。
【参考Website】
蘭領ニューギニア明細図(14217).
Copyright © 2007 Department of Geography, Ochanomizu University. All rights reserved.
http://www.lib.ocha.ac.jp/GAIHOUZU_Web/htmls/14217.html
【参考動画】
西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(1)
西部ニューギニア・戦後ジャングルに放置されたままの旧日本兵の遺骨
日本軍パプアの軌跡(総集編) Jejak Militer Jepang di Papua
https://youtu.be/YqkfCPF5ji4
西部ニューギニア・日本軍イドレ転進作戦 エリー氏の証言(1)~(4) Long March to Idore
https://youtu.be/Yz9VZCW6TU0
https://youtu.be/z6vUxROg2AA
https://youtu.be/Wv5a_tl6ido
https://youtu.be/8eXVwkLriUk
西部ニューギニア・日本軍イドレ転進作戦 アブラハム氏の証言(1)~(3) Long March To Idore
https://youtu.be/BP-zy8axlCA
https://youtu.be/r3zaRtxIDEE
https://youtu.be/SLy1X0mDoRE
西部ニューギニア・日本軍イドレ転進作戦 ワンマ氏の証言(6) Long March To Idore
https://youtu.be/hfZtme4CM_I
https://youtu.be/Wa0CJelFsC4
https://youtu.be/NFzUt307Wm8
https://youtu.be/li9G8uPwXT4
https://youtu.be/zv22PjrpGO0
https://youtu.be/WYQUQrMmFoA
西部ニューギニア・ビントゥニからバボへ(2)~(1) Dari Bintuni ke Babo, Teluk Bintuni, Papua Barat
https://youtu.be/_XftSogulas
https://youtu.be/lAXH8cg1w2M
西部ニューギニア・旧日本軍バボ飛行場 Bandara Babo, Teluk Bintuni, Papua Barat
https://youtu.be/ICrE0cVENWI
西部ニューギニア・マノクワリからビントゥニへ(空撮) Manokwari ke Bintuni
https://youtu.be/l6OBnVEOf0Q
西部ニューギニア・ビントゥニからマノクワリへ(空撮) Bintuni ke Manokwari
https://youtu.be/WcrXrfmHbeM
西部ニューギニア・マノクワリ→イドレ転進作戦 モミ村まで(7)~(1)
https://youtu.be/ajJNMPnWEqU
https://youtu.be/xsPasMtenh4
https://youtu.be/zmt4IUzhw2g
https://youtu.be/J6mMTueRGIM
https://youtu.be/3SAN2QytvWs
https://youtu.be/hXX_Mx2_Y1o
https://youtu.be/NyY5nslbijA
西部ニューギニア・マノクワリ→イドレ転進作戦 イドレ河(4)~(1)
https://youtu.be/z78KM7ofcsg
https://youtu.be/0I-lkFs4W6s
https://youtu.be/0MsqC-ih5nA
https://youtu.be/sp2jXfED5YE
西部ニューギニア・ビントゥニ湾サルベ村で歌い継がれる哀悼歌
https://youtu.be/eLnFRbUR42c
https://youtu.be/KkJigB5E9i4
西部ニューギニア・ビントゥニ湾サルベ村に瞑る旧日本軍将兵
https://youtu.be/07YWkwpTo2E
佐々成典著『戦わざる戦記』(1) 西部ニューギニア戦線 第14師団海上輸送隊
https://youtu.be/JT2j26UzlSk
西部ニューギニア戦線・小田切重徳マノクワリ~イドレ転進作戦証言(18)
小田切重徳著『白骨街道 死の転進 食べること 生きること 死ぬこと』(16)
西部ニューギニア戦線・川上政記マノクワリ~イドレ転進作戦証言(1)
https://youtu.be/NzJU7ANN_9g
西部ニューギニア戦線・遠藤定夫マノクワリ~イドレ転進作戦証言(1)
https://youtu.be/GpqBK6-Z_jM
西部ニューギニア・峰岸政夫マノクワリ~イドレ転進作戦証言(1)
https://youtu.be/Asdg4O6FodA
【参考ブログ】
小田切重徳著『白骨街道 死の転進 食べること 生きること 死ぬこと』(16)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201704article_7.html
西部ニューギアから新たな旧日本兵の遺骨情報が Nasib Tentara Dai Nippon
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201412article_17.html
西部ニューギニアに瞑る旧日本兵 こんな遺骨収集でいいのか(5)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201411article_16.html
西部ニューギニアに瞑る旧日本兵 こんな遺骨収集でいいのか(4)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201410article_29.html
西部ニューギニアに瞑る旧日本兵 こんな遺骨収集でいいのか(3)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201410article_25.html
西部ニューギニアに瞑る旧日本兵 こんな遺骨収集でいいのか(2)
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201410article_24.html
西部ニューギニアから祖国帰還を果たしたとされる“ご遺骨”だが
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201410article_10.html
西部ニューギニアに瞑る旧日本兵 こんな遺骨収集でいいのか
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201410article_8.html
西部ニューギニアに瞑る旧日本兵、そして生き続ける三八歩兵銃
https://gbitokyo.seesaa.net/article/201409article_26.html
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