再録：西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(7) 2017年1月26日: インドネシア文化宮(GBI-Tokyo)

2019年07月13日

再録：西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(7) 2017年1月26日

話しを、対ソ連工作活動に移そう。日高は、元々はいわゆる“北方要員”だったのだろうか？そのことを裏付ける明白な公的資料は残っていない。しかし、結論から言えば、その可能性は大いにあったが、戦局の激変に伴って、遊撃戦（ゲリラ戦）の主舞台となった濠北方面に、その才能を発揮することを求められた、ということだろう。陸軍中野学校の実験隊の教官を務めていたことはすでに書いたが、実験隊とは一体どのような役割を演じていたのだろうか。
満州出張時代の日高岩男（左）か

陸軍中野学校実験隊は、『中野学校の秘密戦』（昭和59年4月30日、中央書林発行。伊藤貞利著。伊藤は中野学校の教官兼研究部主事を務めたとされる）によれば秘密戦資材の実験、研究および学生の実科教育を担当し、他の陸軍研究所等で試作した秘密戦資材の委託実験を担当していた。隊員は将校下士官で編成。実験隊は5班あり、第1班は潜入、潜行、偵察、第2班は偽騙、変装、開錠、開緘（かいかん）、第3班は宣伝、第4班は破壊、第5班は通信、暗号を担当していた。

西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(1)

https://youtu.be/qzaMsL7TRpg

日高大尉（当時）は、昭和16(1941)年5月～昭和18(1943)年6月、第2班長を務めていた。同時期、中野学校の同期生（2甲期生）の谷口義美大尉は、第3班長だった。第2班では、偽騙（欺編。ぎへん）変装用として、甲賀隠密用携帯具、変装具（髪、歯、化粧具）、各国小型カメラ、諜報者用服、外国の衣服、軍服、テープレコーダー、写真用具、各種錠前、開錠・開緘器具などを資材・資料に使用していたとされる。

未確認情報だが、実験隊の教官だった二年余りの間に、日高が対ソ連工作関連で内モンゴル並びに外モンゴル、さらにソ連に出張していた形跡がある。この事は、戦中に日高の実家が記録していた資料が裏付けている。まず、昭和16年10月、内外蒙古に入り、12月に帰京している。そして昭和18年1月30日にはソ連に入り、4月5日に帰京したと書かれている。中野学校の歴史に詳しい専門家は、実験隊のメンバーらが満州にあった「関東軍参謀部第二課」や「ハルピン特務機関」へ出張した事実がある、と語る。日高家の記録が、長男の動向を正確に記すという、偽りが関与できない親子関係からして、事実に忠実だったことは間違いないだろう。

日高大尉の対ソ連関与を示す別情報もある。時代背景の点から、そのまま信じるには足りない記述ではあるが、以下のブログで紹介したように、日高がソ連と何らかの諜報関係を持ったことは、おそらく間違いないだろう。しかし、旧ロシア皇帝から銀時計をもらったとする、最期の遺言に関する間接的な説明は理にかなわない。仮に、日高がとても貴重な品と思われる銀時計を持っていたと仮定すれば、それは、上海時代もしくは満州出張時代に、現地の骨董店などで入手し、それをロシア皇帝に結びつけた、日高一流の“欺編”だったのかもしれない。

鰐工作隊の隊長日高岩男少佐のお墓発見か？(3)　Mayor Iwao Hidaka
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鰐工作隊の隊長日高岩男少佐のお墓発見か？(4)　Mayor Iwao Hidaka
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