再録：西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(18) 2017年2月6日: インドネシア文化宮(GBI-Tokyo)

2019年07月24日

再録：西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(18) 2017年2月6日

日本から西部ニューギニアまでの行程を描いた地図には、□で囲んだ「7.24 27」、そして□のない「730」の数値がある。これらは地図とは無縁で、単に余白にメモ書きしたものと思われる。ちなみに「7.24 27」は、その字の通り「7月24日 27日」を指し、その日時、日高岩男少佐は、ヤピナ島攻撃を前に、ロンベバイ湖南西端の船着き場からおよそ200mほど離れた内陸部にあった鰐工作隊前進基地にいた。徳野明元曹長の著書『鰐部隊とパプア人マンドル』によれば、鰐工作隊は、昭和19(1944)年7月22日に、80高地からこの前進基地へと移動した。
右はマンベラーモ川。左がロンベバイ湖（Panoramioから引用。撮影者：DmitryTelnov）

一方、日高自身がしたためた作戦行動地図では、日高は7月3日～7月20日まで「40高地（徳野は80高地と表現）」にいて、7月21日～29日は前進基地にいたことになっている。21日と22日の日付の差は、日高少佐は部隊の移動を確認して、翌日前進基地へ移ったとすれば辻褄が合う。また、同地図では、赤鉛筆で記されたヤピナ島へ矢印の経路で接近することが表示されている。そして、その日付は「7.30日」となっている。

ロンベバイ湖の図（拡大）

この表記の通り、日高率いる鰐工作隊の南方攻撃隊は、7月30日の夕刻、薄暮を突いて前進基地を発っている。その意味で、この作戦行動地図への、日高少佐自身の手による最後の記入は、7月30日と判断して間違いないだろう。というのも、徳野明曹長並びに小泉雅少尉が二度目のヤピナ島偵察を終えて、前進基地へ戻ってきたのは、まさに7月30日だった。「かくして二人が身を張り合って作ったヤピナ島の地図が隊長に提出されたのは七月三〇日午前九時であった」---徳野が著書の中で明記している。そして、日高はこの日、神工作隊の新穂智少佐とも最終的な打ち合わせを済ませ、即日のヤピナ島への出発を決断した。日高はこの作戦行動地図を、前進基地に残していった。それが遺品の一つとして今日まで残っている背景だ。その夜、いや正確には7月31日未明、自らがヤピナ島攻略戦で戦死するなどとは露ほども思わなかったに違いない。

西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(1)

https://youtu.be/qzaMsL7TRpg

それでは「7月24日 27日」の意味するところは？これは、日高少佐の懐刀的存在であった、徳野明元曹長が著した『鰐部隊とパプア人マンドル』の記述にヒントがある。まず7月24日だが、この日、夕暮れを待って、日高隊長自ら指揮を執り、部下の徳野曹長らとヤピナ島の偵察行に出かけ、7月26日早朝、前進基地へと戻っている。また小泉雅少尉らは、同日、別のカヌーで北方からヤピナ島を偵察している。そして、7月28日～29日、今度は、小泉雅少尉と徳野明曹長による、偵察のやり直しが実施されている。ヤピナ島は一つかそれとも二つかを巡る二人の論争に決着をつけるため、日高少佐が命じたものだ。ところで「27日」は何を示すのか。これは、おそらく第一次偵察行を当初「7月24日～27日」と計画した日高が、そう記入したものと考えることで解決する。