再録：西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(3) 2017年1月22日: インドネシア文化宮(GBI-Tokyo)

2019年07月09日

再録：西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(3) 2017年1月22日

昭和12(1937)年12月31日、満州（現在の中国東北部）の佳木斯（ジャムス）で歩兵第37連隊に編入した日高岩男歩兵曹長・見習士官（当時）は、翌昭和13(1938)年3月1日、少尉に任官し、将校の道を歩み始めた。この頃の出来事といえば、昭和11(1936)年には「二・二六事件」が起き、昭和12年7月に日華事変事件（蘆溝橋事件）、翌昭和13年には国家総動員法が成立している。日中戦争が拡大し、また太平洋戦争に突き進む、いわゆる軍部勢力が増大していった時期と重なる。
昭和16年3月12日に、実家近くの談義所（願成就寺）で撮影されたと思われる日高岩男大尉

宮崎県が作成した戦没者整理名票によれば、日高岩男が歩兵少尉に任官した日として、昭和13年1月25日と記されているが、遺族が戦中に記録した岩男の履歴には、昭和13年3月1日に少尉任官と書かれている。当時は、見習士官の実役停年は基本的に数ヶ月間であったことを考慮すると、おそらく3月1日と考えてよい。整理名票によれば、日高少尉は、同年3月10日、中支派遣竹●（文字不明）部隊転属となっている。このため、3月11日に佳木斯を発って、朝満国境の図們、さらに釜山を経由して3月14日に下関に上陸、そして3月16日、門司港を出帆し、19日上海に上陸した。

西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(1)

https://youtu.be/qzaMsL7TRpg

昭和14(1939)9月23日、中支那派遣軍と北支那方面軍は統合され、支那派遣軍が新設されている。このことから見て、日高中尉は支那派遣軍に転属したものと想像されるが、残念ながら宮崎県作成の戦没者整理名票には、昭和13年3月19日の上海上陸以降の行動に関して何ら記載がない。しかし、同資料によれば、昭和16(1941)年3月1日、日高は大尉に進級している。そして、10日に陸軍中野学校入学のため上海港を出帆し、同月13日に門司港に上陸、15日に中野学校入校と記されている。

しかしながら、この行動記録では不可能な事実がある。それは、昭和16年3月12日に、日高大尉が生まれ故郷である宮崎県日南の飫肥へ来ていたことを示す一枚の写真の存在だ。日高岩男の弟で四男の日高洋右（ようすけ）が所有していた写真の裏面に、『昭和16年3月12日、●（文字不明）儀所　日高岩男　飫中　日高洋右　所有』と記されている。仮にこの写真が、飫肥にある談義所とも呼ばれた願成就寺で撮影されたものであるのならば、洋右記載の通り、この画像が昭和16年3月12日に撮られたものと信じたい。

一方、中野学校関連資料によれば、日高大尉は昭和16年2月入校、同年6月5日卒業と記されている。こちらの情報が正確であれば、日高は2月には東京にいて、3月に一時帰省で故郷に戻っていたとも考えられる。あるいは、戦没者整理名票の記録を勘案すると、上海から日本への帰国日などは不正確としても、ひょっとすると門司港到着後、まず実家がある飫肥へ向かった可能性も否定できない。

というのも、この頃、日高は現在の日南市南郷町にある榎原（よわら）神社で、高橋ミチエと結婚式を挙げている。