再録：西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(38) 2017年2月26日: インドネシア文化宮(GBI-Tokyo)

2019年08月13日

再録：西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(38) 2017年2月26日

「鰐工作隊」付けの警備隊として拠点に残置された、第223連隊（吉野直靖大佐）の第11中隊（吉田正四郎大尉・1小隊欠）の藤井吉治少尉（注：秋田県八郎潟出身）率いる20名から成る第2小隊の行動に関して、『歩兵第二百二十三聯隊史』（昭和55年8月24日・秋田県雪部隊親交会発行）は、ヤピナ島攻略に出撃した四隻からなるカヌー部隊について以下のように記録している。

藤井吉治少尉（『歩兵第二百二十三聯隊史』より引用）

第一班、日高少佐、藤井少尉以外二名
第二班、小泉少尉外三名
第三班、徳野曹長外三名（高屋兵長、石田上等兵等）
第四班、杉沢軍曹外三名

（注1）
第三班の名簿では“等”と書かれている兵は、おそらく戦死した村瀬兵長と思われる。そのことは、徳野元曹著の『鰐部隊とパプア人マンドル』の中で、村瀬兵長が戦闘中に徳野曹長の傍らにいたことからも明白だ。しかし疑問は、なぜ“等”とし、実名を記入してないかだ。それは、おそらく村瀬兵長が第11中隊の第2小隊の人員ではなかったことが関係している。『歩兵第二百二十三聯隊史』では、ヤピナ島の戦いで戦死した同小隊所属の杉沢武雄軍曹（注：戦死後、曹長に進級・今日の秋田県北秋田市出身）の名が巻末の「豪北戦没者名簿」にきちんと記録されているのにも関わらず、村瀬兵長の名はない。

では、村瀬兵長はいったいどこの部隊から鰐工作隊付となったのか？　鰐工作隊には、第36師団通信一個分隊（福士三郎伍長）の他に第223連隊無線一個分隊も派遣されていたが、『雪第三十六師団戦誌』（関東地区雪部隊慰霊会編さん委員会編集発行・昭和63年4月30日）や『歩兵第二百二十三聯隊史』の中の戦没者名簿にその名はない。ちなみに第三班の高屋兵長とは、徳野元曹長がその著『鰐部隊とパプア人マンドル』で何度も書いている「高谷一等兵」のことで、『歩兵第二百二十三聯隊史』が記す「高屋三郎」兵長（戦闘時には兵長に進級か・現在の秋田市河辺戸島出身）で、さらに同じく同書に登場する「石田上等兵」とは、現在の秋田県山本郡藤里町粕毛出身の「石田弥惣治」上等兵を指すものと思われる。

（注2）
第36師団（雪兵団）の生還者らが著した『雪第三十六師団戦誌』（関東地区雪部隊慰霊会編さん委員会編集発行・昭和63年4月30日）によれば、「神工作隊」嘱託の風見秀雄通訳は、日高少佐舟艇長の第一班のカヌーに乗船したとされる。つまり、第一班は、日高少佐、藤井少尉、風見通訳、そしてもう一人の兵（注：おそらく千原恒夫通信兵長）、計4名が乗っていたことになる。

日高岩男大尉（右）と徳野明軍曹（左）。昭和18年10月頃、ニューギニアへ出発前に撮影。日高は昭和19年3月、少佐に、徳野は昭和18年12月、曹長に進級。『鰐部隊とパプア人マンドル』より引用。

西部ニューギニア・ロンベバイ湖ヤピナ島に瞑る日高岩男少佐(1)

https://youtu.be/qzaMsL7TRpg

昭和17(1942)年作成の米陸軍地図。

ヤピナ島攻撃略図（『鰐部隊とパプア人マンドル』より引用）

日高岩男少佐の遺品の一つ。岩男と妻ミチエの間に、開戦一年後の昭和17(1942)年12月25日に生まれた長男・武臣（たけおみ）の写真が一枚。厚手のビニールシートに包まれ、丸まった状態だった。

「神工作隊」の隊長、新穂智少佐が著した『西部ニューギニア横断記』の「第五部未完」の巻末にある行動記録。7月29日～8月4日

ロンベバイ湖上ヤピナ島の連合軍水艇（前哨）基地。徳野明元曹長著『鰐部隊とパプア人マンドル』より引用

昭和19(1944)年11月25日、モロタイ島で日本軍機の攻撃に遭って破壊された米軍飛行艇PBYのOA-10A型機のシリアル番号「44-33875」機。機種に75の番号が。整備兵の表情に笑顔の余裕がある。撮影は、11月25日の数日前と思われる。まさに、この機が、同年7月31日、日高岩男少佐率いる鰐工作隊に夜襲をくらった、ロンベバイ湖ヤピナ島の連合軍水艇基地の隊員救助に向かった。